解 剖 学 II

担当教員

教授  荒木 伸一

准教授 三宅 克也

助教  江上 洋平

助教 川合 克久

授業概要

 解剖学は正常な人体の構造を研究する学問であり、医学の体系の中でも基礎中の基礎となる領域です。将来、臨床医になる人も基礎医学研究者になる人も、まず解剖学(Anatomy)で人体の形態と構造を学び、生理学(Physiology)で役割と機能を学ぶことから医学の学習が始まる。人体の正常な構造と機能の正確な理解によって、異常な状態、病気の成り立ちを知ることができ、その診断や治療法へとつながる。

 解剖学は大きく分けて、肉眼解剖学、組織学(顕微解剖学)、神経解剖学、発生学に分けられる。解剖学IIでは、骨学(Osteology)と組織学(Histology)を分担する。骨学は、肉眼解剖学の一部をなすもので、実習室での人骨標本の観察から、個々の骨の形態、名称を覚えるとともに身体の支柱、運動器としての骨格系の働きを学習する。

 組織学は、人体の構造、成り立ちを肉眼レベルから光学顕微鏡レベルさらに電子顕微鏡レベルへと追究し、機能との関連を学ぶ。組織学の講義内容は、総論と各論に区分される。総論では、生命体の構成単位となる細胞についてと、細胞と細胞間質の特徴的な配列によって構成される基本的な組織の構造、特性について学ぶ。各論では、総論で学習した組織の知識をふまえ、さらにその組み合わせによって構成されている全身の器官・臓器について個々の構造を学習し、なぜそのような構造をしているのかを、その器官・臓器の働きと関連づけて理解する。

一般目標

 人体の構造についての知識を習得すると共に機能や臨床医学との関連を考察し、問題解決能力を培う。 骨学実習、組織顕微鏡実習を通じ、観察力、医学的洞察力を培う。

行動目標

1.人体を構成する細胞、組織の基本構造と特性を理解する。

2.正常な人体の各部の形態や構造を肉眼レベルから顕微鏡レベルまで理解し、機能と関連づけることができる。

3.顕微鏡の操作・観察法を習得し、観察眼を養う。

4.骨格系の概要、個々の骨の形態、名称を理解する。

学習方法

 一回完結方式、すなわち、講義で学習した内容を同日実習室で実物標本の観察を行うことで、得た知識を自らが確認し、定着させる教育方法をとっている。

解剖学分野における学習内容は、膨大で学生には無限とも感じさせる。コアとなるところ、すなわち要点をしっかり理解した上で、重要な基本事項から覚えるのが最も良い学習法であろう。 予習をせずに、講義実習に臨むのは、全く知らないところへ、地図を見ずに乗り込むようなものである。たまに、「実習室で何を観察すればよいのですか。」ととぼけた質問を教員にする学生がいるが、これは、自分が講義を全く聞いていなかったといっているのと同じである。予習をもって完全に理解する必要はない、前もって専門用語に触れ、疑問を残したまま興味をもって授業望んで欲しい。

 解剖学、組織学は、記憶力の勝負のように思われがちであるが、単に単語帳を覚えるような学習法では、何とか試験に合格したとしても将来役に立たない。試験が終わった時点でまず半分は忘れ、その後月日と共に記憶は薄れ、医者になるころにはほとんど覚えていないことが多い。有効的な学習方法は、まず基本的なテキストを読んで全体のながれ、普遍的な人体/組織の成り立ち・仕組みを総論的に理解すること、次に、各臓器、組織の特徴を各論的に理解することである、基本的知識とそれを応用できる能力を得ることができれば、将来、病理学や臨床医学を学ぶときにはもちろんのこと、問題解決能力・科学的判断力・洞察力のある医師・医学研究者として十分役立つことであろう。枝葉末節にこだわらず、まず本幹を捉えること、細かいことは必要なときに調べればよいのです。

 講義は、PowerPointで行います。プリントは、PowerPointの内容に準拠しており、授業中にワークシート形式で書き込んでいきます。プリントはカラー印刷です、余分はありませんので自分の分だけ各一部取ってください。講義のファイルは、Webでダウンロード閲覧できます。予習・復習、出席できなかった場合に利用してください。

参考図書

 教科書は指定しないが、参考図書として少なくともテキスト一冊と実習用図譜が必要である。

【テキスト】

ジュンケイラ組織学 11版: 坂井建雄、川上速人監訳 丸善 \9800

  世界中の医学部で使われる伝統的ある組織学テキスト。頻繁に改定されているが、ところどころに詳しすぎるところ、内容がやや古いところが混在するが、世界標準ということで・・・。原書版(Basic Histlogy Lange)には、CDROMがついている。

 

人体組織学: 内山安男、相磯貞和 監訳 南江堂 \8500

 新しいテキストで、現代の医学カリキュラムに即した構成になっており、ユーザーフレンドリーで読みやすい。内容も詳しすぎず、分子生物学から臨床関連までを適度に盛り込んである。

組織学:伊藤 隆 著 南山堂 

 先輩たちが良く使っていた教科書である。今回の改定により新しい分子生物学や臨床関連が加えられ、内容が豊富になったが、多くなりすぎて学習しにくい感じがする。

最新カラー組織学 ガートナー・ハイアット著 西村書店 \4900

 最新の分子生物学的内容、機能との関連、臨床ノートなども適度に盛り込まれたモダンな体裁。内容も結構充実している。写真、イラストも良い。米国でも人気のテキスト。コストパフォーマンスNo.1.

入門組織学: 牛木辰男 著 南江堂 \4854

 非常に簡単に基本事項が分かりやすくまとめられている。時間をかけずに、最小限の勉強で済ませたい人向け。何をどこまで覚えればよいかどうしても分からなければ、この本を何度も読んでまる覚えする。

【図譜(アトラス)】

Di Fiore 人体組織図譜: 南山堂

組織図が写真でなく、すべて描画である点が、組織実習スケッチの参考に最適である。

評価方法

骨学実習試験 (主として骨標本を用いた質問。ラテン語問題を含む)

組織学総論試験 (ペーパー筆記)

組織学各論試験(ペーパー筆記)

組織学実習試験 (組織標本・写真による)

その他、組織実習スケッチ、授業および実習の態度、出席状況を考慮し、総合的に評価する。 

再試験は一度だけ行う。

 量が多いので、すべての学生に求める到達レベルはやや低めに設定し、基本事項に重点をおいている。何が重要で本質的なものかは、講義実習の学習内容が理解できれば自然にわかるはずである。