2009年07月08日  その他

高校生に工夫を凝らして神経病理学入門を教える

 香川大学医学部炎症病理学(責任者:上野正樹 准教授)は、高松高等学校の生物専攻の3年生に対して、高校生向けに工夫した神経病理学入門の講義と実習を2日間かけて行いました。これは、高松市内で開催された神経病理学会50周年記念事業の一つとして実施されたものです。

 1日目は、6月4日(木)に高松高等学校において神経病理学入門の講義を行い、生物を専攻している3年生46人が受講しました。

 まず、ヒトの体が脳によって動かされており、様々な情報を獲得し記憶する役割を脳は担っており、このような仕組みが破綻する原因としてアルツハイマー病のような認知症などの病気があることを概説しました。記憶と思考が徐々にできなくなるアルツハイマー病の脳内では、神経細胞が死んでいくだけでなく、不溶性のアミロイドベータ蛋白からなる老人斑と呼ばれる脳内の「しみ」のようなものが出来ていくことを学びました。また、狂牛病がらみで世間で頻繁に話題にのぼっているクロイツフェルツヤコブ病CJDに代表されるプリオン病の脳内では、特殊な構造を持つ異常プリオン蛋白が沈着すること、変異型CJDは、狂牛病に罹っている牛の異常プリオンを摂取することにより感染すると考えられこと等を勉強しました。生徒たちは、脳内に異常蛋白が貯まることが病気の原因となることを知り、どうしたら、そのような認知症にならないですむのか、といった多くの質問が出されました。

 2日目は、6月20日(土)に行い、1日目を受講した学生のうち25人(引率教員2人)が香川大学医学部病理学実習室を訪れ、実習に参加しました。病理標本を顕微鏡で観察し、アルツハイマー病の脳では老人班が蓄積していることを自分の目で確認して、感嘆の声を上げていました。そして認知症の原因について、各々さまざま観点から考察しました。

 最後に、講義、実習を通して学習したことについてレポートを作成し、脳の病気に対する理解を深めました。講義と実習を組み合わせることで、なかなか理解しにくいアルツハイマー病やプリオン病の原因を高校生は興味を持って理解できることが確認されました。