放射線腫瘍学

柴田 徹 教授  

がん治療の将来を担う臨床医・専門医の育成
「切らずに治す」高精度放射線治療の基礎的・臨床的研究の推進

はじめに:放射線治療とは

本邦では悪性新生物(がん)による死亡が年々増加しており、1980年代以降は死因順位の第1位を占めています。従って、がん治療に携わる医師・医療者の育成が社会的な急務であり、医学部教育や臨床実習、卒後研修などあらゆるレベルにおけるがん治療に関する教育の充実が必要とされます。近年のコンピュータや工学技術の発達は日進月歩であり、その恩恵を直接的に受けて、放射線治療は飛躍的に高精度化し、従来不可能であった治療効果の向上と有害事象の低減が同時に実現可能となり、がん治療における重要性が高まっています。

教育

がんに対する有効な治療の一つである「放射線治療」に関する教育を担当します。一般には、がん放射線治療の学問体系を「放射線腫瘍学(Radiation Oncology)」と呼びます。

  • 3-4年次の各ユニット講義を担当します。放射線治療の理解に必要な基礎的および臨床的知識の修得を目指します。放射線腫瘍学の総論としては、放射線の種類や線量、物質的な相互作用(放射線物理学)および放射線の生体に対する影響(放射線生物学)としてDNAレベルから細胞、腫瘍、正常組織の反応とそのメカニズムについて学びます。各論としては、ユニット分野に包含される各種悪性腫瘍に対する放射線治療の役割、治療内容、有害事象などについて分かりやすく説明し、必要な知識が得られるよう心掛けています。
  • 5年次の医学実習Iでは、肺癌、乳癌、子宮癌、食道癌、頭頸部癌、前立腺癌などの代表的な悪性腫瘍に対する臨床現場に「学生医」として参加します。臨床医として必要な基本診察手技の習熟を促します。また、放射線治療の目的(根治・緩和目的)、具体的方法(外部照射・小線源治療)、治療効果(局所制御・有害事象)について、実際の症例に則して学習を通じて理解を深めます。さらに、医師国家試験に必須のがん治療の臨床問題に関する再確認の機会を提供します。
  • 6年次の医学実習II(希望者のみに実施)は、がん治療に興味のある学生向けの発展的な学習の機会です。手術や化学療法などと集学的に行われる放射線治療の果たす役割や選択肢について学びます。各種がんの画像情報の把握(融合画像技術、腫瘍輪郭の決定)を始め、高精度放射線治療(強度変調放射線治療、画像誘導放射線治療、体幹部定位照射)などの高度技術を駆使した先端的治療の原理、方法を理解します。また、指導医とともに放射線治療計画を模擬的に立案(見学/シミュレーション)するなど、各人の興味に応じたプログラムとなるよう工夫します。さらに、学外の各種セミナーや学会への参加・発表の機会を経験できるように奨めます。
  • 卒後教育としては、臨床研修医に対して選択コースを提供します。
  • 「中国・四国高度がんプロフェッショナル養成基盤プログラム」の一環として医学系研究科(大学院博士課程)にてがん専門医養成コース「放射線治療分野」を開講しています。

研究

エビデンスに基づく標準治療を推進しつつ、将来の標準治療開発に資する研究を実施します。更に、高精度放射線治療の更なる飛躍を目指して基礎的・臨床的研究を行います。

  • 強度変調放射線治療(IMRT: intensity-modulated radiotherapy)の技術開発とその臨床研究:脳腫瘍、頭頸部腫瘍(咽頭癌など)、肺癌、骨盤部腫瘍(前立腺癌や子宮癌など)を始めとするあらゆる分野への適応拡大を目指します。
  • 画像誘導放射線治療(IGRT: image-guided radiotherapy)の技術開発と臨床研究:リアルタイム画像を利用した位置情報の自動照合による放射線治療技術の高精度化を図ります。
  • 融合画像処理技術を応用した肉眼的・臨床的標的体積、リスク臓器の抽出に関する研究:CTやMRIのみならず多様な画像情報を統合できる画像処理技術(Deformable Registration)を応用して、輪郭入力の高精度化・迅速化や積算線量計算の実現を目指します。
  • 正常組織の有害事象発生メカニズムの解明と予測法の開発および臓器機能の温存技術の開発:肺癌の放射線治療において問題となっている放射線肺臓炎に関する研究を進めます。また、高精度放射線治療を駆使して有害事象低減、臓器機能温存の臨床研究を進めます。
  • 放射線治療の臨床実績・治療成績の調査研究:各種悪性腫瘍に対して当院において過去/現在に実施される治療効果やその後の経過を評価することで、その有用性や安全性等を検証する研究を継続的に行います。
  • 他の診療科で行われているがんの集学的治療の臨床研究に協力し、プロトコールに準拠した放射線治療を担います。
  • 全国規模の研究組織で遂行される臨床試験への参画:厚生労働科学研究(がん臨床研究事業)において研究班(代表:西村恭昌)に所属し、「頭頸部腫瘍に対する強度変調放射線治療の確立と標準化のための臨床研究」(分担研究課題)を実施しています。また、同研究班で現在実施中の臨床試験は以下の通りです。
    • 上咽頭癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)の多施設共同第II 相臨床試験(JCOG1015)
    • T1-2N0-1M0中咽頭癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)の多施設共同非ランダム化検証的試験(JCOG1208)
    • 頸部食道癌に対する強度変調放射線治療 (IMRT)を用いた化学放射線療法の多施設共同第II相臨床試験(JROSF12-1)

教職員

職名 氏名 専門分野
教授 柴田 徹 放射線腫瘍学、放射線生物学
日本医学放射線学会専門医(治療)、日本がん治療認定医機構暫定教育医
助教 髙橋 重雄 放射線腫瘍学
日本医学放射線学会専門医(放射線科)