この骨標本ステレオ解剖図は、香川大学医学部附属病院放射線部・勢川博雄技師が人体骨標本をステレオ撮影することにより、臨床現場で骨X線検査にあたっている放射線技師が3次元的な骨構造をより正確に理解できるように作成されたものである。人体の骨の構造を理解するには、医学部おける解剖学教育で行われているように人骨の実物標本を実際に手に取ってじっくり時間をかけて観察することで骨格、個々の骨の形、名称、機能関連を会得するのが最良であろう。しかし、このような学習の機会を得ることは実際には困難で、多くの場合平面的な書物の図譜に頼るしかない。これまでにも、優れた図譜や教科書は多くあるが、解剖学図譜は非常に分厚く高価である。また、私の知る限り骨構造を立体視ができるものはない。このステレオ解剖図は、解剖学実習室内でしか観察できない実物標本を、ステレオ撮影し、電子ファイル化することで、自宅や職場でiPadやPCのモニターで手軽に骨の立体観察ができるようになっており、現代の職場環境やライフスタイルに適応した使いやすいツールとなっている。放射線技師だけでなく理学療法士、看護師などのパラメディカル医療従事者、医学部学生の学習など様々な場面で活用されることを期待している。
香川大学医学部組織細胞生物学 教授
荒木 伸一
2013年9月24日
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