血液検査とは
はじめに.
これは外来迅速検査の説明です。
最初に基準範囲と血液成分、注意していただきたい事柄について記述しておきます。
基準範囲は左図のように、各検査 項目ごとに健常者を測定して、結果の95%の幅をとって求めています。
血球には、赤血球(酸素運搬)、白血球(感染防止、免疫)、血小板(止血)の3つの系統があります。
ご注意いただきたいこと
ご自分の検査結果をごらんになって、異常値が出たからといって勝手にご判断されないようにお願いします。検査結果は医師が総合的に診断して、患者様に説明をします。なにかご質問がある場合は、診察時にご相談ください。
香川医科大学医学部附属病院検査部(2002年7月作成)
04-01.Na(ナトリウム)
ナトリウムは、電解質成分の1つです。 Na測定により、体液水分量の平衡状態を知る指標とされます。
基準範囲:135−146 単位:mmol/l
04-02.K(カリウム)
カリウムは、電解質成分の1つです。 K測定することで、K代謝調節機構の異常をきたす状況を把握できます。
基準範囲:3.5−4.6 単位:mmol/l
04-03.Cl(クロール)
クロールは、電解質成分の1つです。 Cl測定により、体液水分量の平衡状態を知る指標とされます。
基準範囲:98−110 単位:mmol/l
04-04.Ca(カルシウム)
カルシウムは、その99%以上が骨や歯牙に存在して、骨格の維持およびCaの貯蔵庫の役割をしています。
基準範囲:8.2−10.2 単位:mg/dl
04-05.IP(無機リン)
無機リンは、Caと共に測定することにより、各種の内分泌、骨代謝異常をきたす各疾患の病態を推測するのに役立ちます。
基準範囲:2.5−5.5(成人)、4.0−7.0(小児)単位:mg/dl
2.肝(臓)・胆道系の検査
04-11.GOT(AST) 検査名称 ジーオーテイ(エーエステイ)
肝臓、心筋、骨格筋に多く含まれている酵素です。GOTを持つ臓器が障害を受けたりすると、細胞から 血液中に漏れ出てきます。このように組織が壊れて血液中にでてくる酵素を逸脱酵素といいます。
基準範囲:1−40 単位:U/l
04-12.GPT(ALT) 検査名称 ジーピーテイ(エーエルテイ)ほとんどが肝臓に存在し、GPTが高い場合には肝臓に異常があると考えられます。GOTとGPTをセットでみるのが普通です。
基準範囲:1−35 単位:U/l
04-13.LDH 検査名称 乳酸脱水素酵素
LDH(乳酸脱水素酵素)は、全身のあらゆる臓器に含まれています。値が上昇したときは、どこかの臓器が障害されていることを示します。
基準範囲:230−460 単位:U/l
04-15. ALP 検査名称 アルカリフォスファターゼ
肝胆道系に多くみられる酵素です。
基準範囲:100−280(成人)、250−770(小児)単位:U/l
04-16. γ-GTP 検査名称 ガンマージーテイーピー
γ-GTPはアルコール常飲と関係が深く、測定は、肝・胆道系の異常、アルコール性肝障害の推測に有用です。
基準範囲:10−51 単位:U/l
04-26. T-Bil(総ビリルビン)
ビリルビンは、胆汁の主要な色素です。 肝細胞障害や肝・胆道系疾患ではビリルビンの抱合や排泄に障害が起こり、黄疸などが現れます。
基準範囲:0.1−1.2 単位:mg/dl
04-27. D-Bil(直接ビリルビン)
直接ビリルビンの異常は主に肝の障害により生ずることから肝臓・胆道などの疾患の指標として有用とされています。
基準範囲:0.1−0.6 単位:mg/dl
04-98. AMMON(血漿アンモニア)
アンモニアは有害な物質で、意識障害が生じる原因となります。肝性昏睡時などの病態を把握するために測定されます。
基準範囲:28−70 単位:
?g/dl
3.膵(臓)機能検査
04-17. AMY(アミラーゼ)
消化酵素の1つです。 アミラーゼの測定は、膵臓疾患の早期診断・経過観察に利用されます。
基準範囲:30−140 単位:U/l
4.腎(臓)機能検査
04-21.BUN(尿素窒素)
体内でエネルギーとして使われた蛋白質の老廃物です。BUNは主に腎臓機能の指標になります。
基準範囲:7−20 単位:mg/dl
04-22.CRTN(クレアチニン)
体内でエネルギーとして使われた蛋白質の老廃物です。CRTNは主に腎臓機能の指標になります。
基準範囲:0.7−1.3(男性)、0.5−1.0(女性) 単位:mg/dl
5.尿酸
04-23. UA(尿酸)
体内の細胞のもとになっている物質である核酸の老廃物です。UAは主に痛風や腎臓機能の指標になります。
基準範囲:4.3−8.2(男性)、2.7−5.8(女性) 単位:mg/dl
6.筋(肉)関連酵素
04-14.CPK 検査名称 クレアチンキナーゼ
骨格筋、心筋、脳、平滑筋に高濃度に存在してます。血中に逸脱してきたCPKを測定することにより、これらの組織の障害を診断することができます。
基準範囲:30−180 単位:U/l
7.血清蛋白検査
04-24.TP(総蛋白質)
血清中の蛋白質の総量です。全身状態の把握・病態・機能を知る指標となります。
基準範囲:6.5−8.2 単位:g/dl
04-25.ALB(アルブミン)
アルブミンは、血清総蛋白の50−70%を占める単一の蛋白で、肝臓で合成されます。肝臓機能の指標や腎臓機能等の指標になります。
基準範囲:3.5−5.5 単位:g/dl
8.血清脂質検査
04-31.T-CHO(総コレステロール)
コレステロールを測定することにより、脂質代謝異常をきたす疾患の推測ができます。動脈硬化症との関連性でも有名です。
基準範囲:130−220 単位:mg/dl
04-32.TG(中性脂肪またはトリグリセライド)
血液中の中性脂肪が多くなりすぎると、コレステロールと同様に動脈硬化性疾患の危険因子になります。
基準範囲:30−150 単位:mg/dl
9.血清糖質検査
04-41.Glu(血糖)
ブドウ糖の血液中濃度を血糖と呼んでいます。血糖測定により、糖尿病や低血糖を呈する各種の糖代謝異常が推測できます。
基準範囲:70−110 単位:mg/dl
04-88.LA(乳酸)
乳酸は血液の循環不全や、糖代謝障害を疑うときなどに測定されます。
基準範囲:6−17 単位:mg/dl
29-03.HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
HbA1cは過去1−2ヶ月間の血糖コントロール状態を表す指標として糖尿病診療において重用視されています。
基準範囲:4.3−5.8 単位:%
10.血球検査
31-01.WBC(白血球数)
血液中の白血球数算定により、白血球数を増減させる疾患の有無、疾患の重症度、白血球系造血能の程度などが推測できます。
基準範囲:47−78 単位:×102/
?l31-02.RBC(赤血球数)
赤血球数は、貧血の有無、赤血球増多症のスクリーニング検査として重要です。
基準範囲:400−540(男性)370−490(女性)単位:×104/
?l31-03.Hb (血色素またはヘモグロビン)
Hbは赤血球数、ヘマトクリットなどと組み合せて貧血などの基本的スクリーニングテストとして用いられています。
基準範囲:13.0−17.0(男性)11.0−15.0(女性)単位:g/dl
31-04.Ht(ヘマトクリット)
血液中に占める赤血球の容積の割合(%)をヘマトクリット(Ht)といいます。赤血球数およびHbと共に貧血の有無、程度を知る指標となります。
基準範囲:40.0−50.0(男性)35.0−45.0(女性)単位:%
31-05.Plt(血小板数)
血小板数は、出血性疾患のスクリーニングテストとして、他の出血・凝固検査と共に欠かすことのできない検査項目です。
基準範囲:15.0−35.0 単位:×104/
?l11.止血・血栓検査
35-01.FIB(フィブリノーゲン)
フィブリノーゲン定量は、血栓形成・出血傾向の推測ができます。外科手術前のスクリーニング検査としても有用です。
基準範囲:200−400 単位:mg/dl
35-02.AT3 (アンチトロンビンスリー)
AT-IIIは血液凝固阻止因子のひとつで、播種性血管内凝固症候群(DIC)などの診断情報としての有用性が高いです。
基準範囲:80−120 単位:%
35-03.FDP(線維素分解産物)
凝固した血液が再びとける現象を線維素溶解現象といいます。その生成物が線維素分解産物です。体内での線溶現象を推測することができます。
基準範囲:4.0以下 単位:
?g/ml
12.炎症の検査
29-01.CRP(C反応性蛋白)
CRPは炎症性疾患や体内組織の壊死があるような病態で、いち早く上昇します。各種炎症の診断や経過観察などに極めて有用です。
基準範囲:0.20以下 単位:mg/dl
29-02.SAA(血清アミロイドA蛋白)
CRPと同様に各種炎症の診断や経過観察などに有用です。
基準範囲:8.0以下 単位:
?g/ml12.甲状腺ホルモンの検査
29-04.TSH(甲状腺刺激ホルモン)
甲状腺刺激ホルモンを測定することにより、下垂体のTSH分泌機能のみならず甲状腺自体の機能異常を判定することができます。
基準範囲:0.35−3.73 単位:
?IU/ml29-05.FT3(遊離トリヨードサイロニン)
遊離トリヨードサイロニンの測定により、甲状腺機能の亢進・低下状態を推測することができます。
基準範囲:2.20−4.10 単位:pg/ml
29-06.FT4(遊離サイロキシン)
遊離サイロキシンの測定により甲状腺機能の亢進または低下を推測します。
基準範囲:0.88−1.81 単位:ng/dl
参考文献
病院の検査がわかる 検査の手引き.新装改訂版. 2001:小学館