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Fishberg濃縮試験


原理と意義】

一定時間の飲水制限後に採尿し,尿の濃縮の程度を調べる検査です。飲水制限を続ける間に不感蒸泄などにより血漿浸透圧が上昇し,抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が増加します。これにより集合管での水再吸収量が増え,体内への水分貯留と尿の濃縮が生じます。ADHの分泌に異常がなければ,腎髄質の機能をみる検査といえます。


実施法


注意


成績判定

性,年齢,季節,タンパク摂取量により差がみられるが,3回のうち,少なくとも1つの浸透圧が850mOsm/kg以上を正常とみなしてよい。750mOsm/kg以下の場合は濃縮能低下であり,腎不全では300〜350mOsm/kgに固定する。


Fishberg濃縮試験の尿浸透圧基準値

健常青年,高タンパク食

単位:mOsm/kg

男 性女 性
夏 季冬 季
第1尿1,108±82983±102912±173
第2尿1,342±100943±931,000±124
第3尿1,349±102940±96941±144

前田貞亮,他:綜合臨床,17:2065, 1968

各年齢層別のFishberg濃縮試験

人間ドック検査例,普通タンパク食
単位:MmOsm/kg
年 齢男 性女 性
40歳以下1,064±37903±77
41〜50歳992±98893±88
51〜60歳868±48844±32
61〜70歳858±33742±77
70歳以上752±59

ADH分泌不全がなければ濃縮能の低下は,ADHに対する集合管の反応性の低下か腎実質の障害です。前者は腎性尿崩症であり,後者には腎不全があります。GFRが正常または低下していても,その程度に比べ濃縮能低下が高度の場合は,アミロイドーシス,Sjogren(シェグレン)症候群,間質性腎炎,慢性腎孟腎炎,閉塞性尿路疾患,嚢胞腎,低K血症,高Ca血症,薬剤性腎障害による尿細管,髄質の障害を考えます。


尿の濃縮と希釈

近位尿細管腔液の浸透圧は血漿とほとんど変わりませんが,太いHenle上行脚は水の透過性を有さずNa,K,Clの再吸収を行うため,尿細管腔液の浸透圧は低下します。

 Henle係蹄は深部に向かってヘアピン状に走行し対向流系とよばれる機構を構成し,この作用により髄質間質の高浸透圧が形成,維持されます。遠位尿細管でも水を伴わないNa,K,Clの再吸収が行われ,管腔液はここでさらに低張となります。

 集合管は基本的には水の透過性を有さず,周囲の間質は深部ほど高浸透圧となっています。ADHが作用しない場合は,低張のまま希釈尿として排泄され,ADHが作用した場合は,集合管に水の透過性が生じ,髄質と尿細管腔の浸透圧勾配により水が再吸収され濃縮尿が生成されます。髄質間質の浸透圧維持にはNa,Clと尿素が必要です。


尿浸透圧と尿比重

 通常尿浸透圧は尿比重に比例し,30〜35mOsm/kgが比重O.O01に相当します。しかし糖やタンパク,造影剤など大分子量物質が多量に尿中に存在する場合は,浸透圧よりも比重が増加します。


参考文献

『臨床検査法提要』改定第30版 金井 泉/金井 正光 金原出版,1993


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