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香川医科大

TBA-80FR・NEOによるBFP(Basic fetoprotein)測定法の検討

○多田達史1),梶川達志1),田港朝彦2)
1)香川医科大学医学部附属病院検査部,
2)同臨床検査医学
【目的】

BFP(Basic fetoprotein)は,胎児の血清,腸および脳組織から抽出された分子量55kDの癌胎児関連塩基性蛋白である。BFPは腫瘍マーカーとして血清および尿が用いられている。尿中BFPは尿路上皮癌,とくに膀胱癌に特異性の高い腫瘍マーカーとして注目されるようになった。BFPの測定方法としては,RIA法,EIA法,LIA法などが主流である。しかし,これらの方法は測定時間が長時間であったり,専用機器が必要である。そこで今回我々は,LIA法に使用しているラテックス試薬を用いて,汎用機器への適用を試みた。

【方法】

分析装置にはTBA-80FR・NEO(アボット東芝),測定試薬はLX試薬'栄研'BFP(栄研化学)を用いた。比較対照法として専用機器のLX-2200(栄研化学)を用いて同試薬で検討した。

測定原理
抗BFPマウスモノクローナル抗体感作ラテックスと検体中BFPが反応し,ラテックス粒子が凝集する。この時の吸光度を波長660nmで測定し,BFP濃度を求めた。
測定方法
尿検体45μlと緩衝液200μlを分注後,37℃で5分間インキュベーションし,抗BFPマウスモノクローナル抗体感作ラテックスを61μl加え,5分間の吸光度変化量をエンドポイント測定した。キャリブレーションは6ポイントのスプラインカーブで行った。
測定法の比較評価
2つの方法の比較については,Passing-Bablok regression(統計ソフト:analyse-it,Analyse-It Software, Ltd.Excel97version 以下PBrと略す)を用いて,傾き,切片,95%confidence interval(以下CIと略す)を求めた。

【結果】
  1. 測定精度:同時再現性(n=10)は2濃度(平均13.5,20.1ng/ml)の患者尿を用いて検討した。本法のCV(%)は,それぞれ6.29,3.67であった。日差再現性(n=6)も2濃度(12.9,20.7ng/ml)の患者尿を用いて検討した結果,CV(%)はそれぞれ10.62,7.22%であった。
  2. 希釈直線性:高BFP尿を専用希釈液で希釈して検討した。本法は少なくとも200ng/mlまで原点を通る直線性を示した。
  3. 共存物質の影響:患者検体(20ng/ml)を用いて検討した(尿9容に対して共存物質1容の割合で添加)。グルコース2,000mg/dl,クレアチニン400mg/dl,アスコルビン酸500mg/dl,トルエン10ml/l,NaClは1,000mg/dlまで影響は認められなかった。
  4. 検出限界の検討:低濃度標品の希釈したものをそれぞれ5重測定し,その平均値の±2.6SDを求め,ゼロ濃度と重ならない濃度を検出限界とした。その結果,本法の検出限界は9.6ng/mlであった。5)他法との相関:本法(Y)と専用機器のLX-2200(X)との相関をPBrで検討した(n=40)。回帰式はy=0.985x+0.138(傾きのCI:0.967?1.007,切片のCI:-0.956?0.687),相関係数0.996となった(Fig.1)。
【結語】

本法は専用機器との相関も良好で,簡便にBFPを測定できる。しかし,反応検出感度が汎用機では低く,より再現性・検出限界を向上する検討が必要であると考えられる。

Fig1.Passing-Bablok regression of results by LX-2200 method and present method

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