脳神経の神経線維を包む細胞(シュワン細胞)より発生する良性腫瘍です。原発性脳腫瘍の10.8%を占め、30〜70歳の間に多く、やや女性に多い良性腫瘍です。神経鞘腫のうち聴神経より発生することがほとんどです(聴神経鞘腫)。ここでは聴神経鞘腫について詳しく述べます。 なお、聴神経は前庭神経と蝸牛神経からなり、腫瘍は前庭神経より発生することが多いため、前庭神経鞘腫とも呼ばれることがあります。


 症状は他人の言葉が聞き取りにくいといった聴力障害から発症することが多く、また耳鳴りをよく伴います。腫瘍が大きくなってくると、周囲の脳神経への圧迫症状が出現し、顔面神経圧迫による顔面筋麻痺や三叉神経麻痺による顔面の感覚障害を来たしたり、小脳の圧迫にて小脳失調症状や眼振を認めるようになります。また、非常に大きくなって髄液の流れが悪くなると閉塞性水頭症を来たし、頭蓋内圧亢進症状を呈することがあります。


 診断にはMRIが有効ですが、他には耳鼻科的な聴力検査や平行機能検査が行われます。



 治療は、手術と定位的放射線治療があります。小さなものについては今までの腫瘍と同様に経過観察も選択肢の1つです。また3cmを超えるものについては定位的放射線治療では困難であり、手術が選択されます。手術では全摘出することで治癒が得られます。手術に際には、顔面神経(顔面筋)や蝸牛神経(聴力)の機能温存が問題となります。そのため術中に顔面神経モニタリングや、聴性脳幹反応、蝸牛神経モニタリングを行いうことで、より安全で神経機能の温存を目的とした手術が行われます。近年の手術技術の進歩やモニタリングを用いた手術によって、全摘出率、神経温存率ともに成績は向上しています。

 またガンマナイフなどの定位的放射線治療が行われることも増えています。腫瘍がすぐに消失することはないですが、腫瘍縮小や増大抑制効果の良好な成績が報告されるようになっており、顔面神経障害や聴力障害の発生は少ないとされています。手術、放射線治療のいずれを選択するかについては、腫瘍の状態によって適応がありますが、それぞれの治療のメリット、デメリットを良く考慮し専門医師、患者との相談で決めることとなります。


 放射線治療ができるガンマナイフ装置は、現在日本国内に限られた数しかありませんが、当科の関連病院(岡山県、岡村一心堂病院)に設置しているため、スムーズに行うことができます。

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