手術ナビゲーション と 術中モニタリング

脳神経外科領域は、重要な神経や血管が走行するなど解剖学的に複雑で個人差が大きいために、それを十分に熟知して手術を行わないと合併症を起こす危険性があります。そこで香川大学医学部脳神経外科教室では、脳神経外科手術を安全で正確に行うために、
手術ナビゲーション術中モニタリングを多くの手術で用いています。






 手術ナビゲーションでは、術前に撮影された頭部CTMRI画像を手術ナビゲーションシステムに取り込み、手術部位の確認をリアルタイムで行いながら、手術を行います。我々は1999年から香川県内では最初に脳神経外科手術ナビゲーションシステムを導入し、ほとんどの脳腫瘍摘出手術に用いています。ナビゲーションを用いた手術では、脳のどこを手術しているか、病変はどこまであるのかなどの情報を顕微鏡の視野内に表示することができるので、必要最小限の脳の切開や、大事な部位の温存が正確に可能となりました。しかし、決して簡単に誰でも手術ができるようになったのではなく、術者の経験と高度な技術はナビゲーション手術でも必要です。
 このナビゲーション手術は、主に脳腫瘍の手術に使われます。特に脳の深いところにある腫瘍や、境界がわかりにくい腫瘍、病変と重要な正常組織が隣接している場合には、非常に有用です。

実際の手術(ナビゲーションを装備した顕微鏡手術)


   


我々の施設では他で用いられている術中に腫瘍の解剖学的な位置を確認する目的以外に、PET画像も手術ナビゲーションシステムに取り込み、MRIと融合した画像をもとに手術を行うことで神経膠腫において最も悪性度が高い部分を確実に摘出し、正確な診断を行うことに利用しています。


この症例では、左前頭頭頂部にできた脳腫瘍の摘出手術に際し、腫瘍のアミノ酸代謝を調べるメチオニンPET画像を手術ナビゲーションシステムに取り込みMRI画像と融合し、悪性度が最も高いと思われる部位を確実に摘出して診断しました。







この症例では、左前頭葉にできた脳腫瘍の摘出手術に際し、腫瘍の核酸代謝を調べるフルオロチミジンPETを手術ナビゲーションシステムに取り込みMRI画像と融合し、悪性度が最も高いと思われる部分を摘出しました。また術前にfunctional MRIを用いて言語野の広がりを同定しその部分を損傷しないように手術を行いました。






 術後の脳神経機能の合併症は、患者さんのその後の生活に重大な影響を及ぼします。そのため神経モニタリングによる手術中の異常の早期検出は、不可逆的な神経合併症の予防に大変重要です。神経モニタリングの目的は、運動機能に加え、感覚機能、視機能、聴覚機能などの温存で、モニタリング法は多岐にわたります。モニタリングには、脳神経外科医、麻酔科医、臨床検査技師のチームワークが欠かせません。
 現在、香川大学医学部脳神経外科教室では以下の術中モニタリングを行っています。


運動誘発電位(MEP) 中心溝近傍腫瘍、脳動脈瘤手術
体性感覚誘発電位(SEP) 中心溝近傍腫瘍、脳幹腫瘍、脊髄腫瘍、脳動脈瘤手術
聴性脳幹反応(ABR) 小脳橋角部腫瘍、顔面けいれん、脳幹腫瘍
視覚誘発電位(VEP) 視神経近傍腫瘍、下垂体腺腫、後頭葉腫瘍
局所酸素飽和度(rSO2) 頚動脈ステント留置術、頚動脈内膜剥離術
脊髄誘発電位 脊髄腫瘍
覚醒下手術 言語野・運動野近傍腫瘍

 これらの術中モニタリングは手術ナビゲーションシステムと組み合わせることで、難易度高い手術でも合併症を極力少なくするように努めています。


この症例では、中心溝近傍に存在する脳腫瘍に対し、まず体性感覚誘発電位(SEP)を用いて中心溝の同定を行い、運動誘発電位(MEP)をモニタリングしながら後遺症(麻痺)を残すことなく腫瘍を確実に生検しました。