脳血管障害は脳卒中、中風とも呼ばれますが、中風という言葉の由来は古く、1世紀頃の中国の古い書物にある「邪風に中(あた)れば撃仆(打ちのめされ)、偏枯(半身不随)となる」という記載が語源であるとされています。すなわち当時は悪い風に中ることが脳血管障害の原因と考えられていたようです。
平成10年の死因統計を見ますと第1位はがん、第2位は心疾患、第3位は脳血管障害で、毎年約14万人が脳血管障害で亡くなられています。しかし昭和26年から昭和55年までは脳血管障害が日本人の死因の第1位を占めていました。死亡率でみますと脳血管障害は昭和40年頃をピークに減少してきていますが、平成8年に行われた厚生省の患者調査によれば脳血管障害総患者数は約173万人で昭和62年の約114万人に比べ増加が著しく、死亡率は減少していても患者数は減少していないことが分かります。
脳血管障害は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に分類されます。脳梗塞は血管がつまることで発症し、脳出血、くも膜下出血は血管が破れ出血することで発症します。脳梗塞は脳血管障害のうち約70%を占め,さらにラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症に細分類されます.そして,それぞれの病態に合った治療が行われています。
脳梗塞の危険因子は加齢、高血圧、糖尿病、高脂血症などですが、加齢は避けられませんので、その他の危険因子を良好にコントロールすることが脳梗塞の予防に繋がります。また心房細動という不整脈も心臓の中に血栓を作りやすくなるため、予防のための服薬が必要となる場合があります。
次に脳梗塞でみられる症状ですが、急に片方の手足の力が抜けて思うように動かせなくなったり、半身がしびれたり、ろれつが回らなくなったり、物が二重に見えたりなどがあります。このような症状が現れた場合はできるだけ早く医療機関を受診して検査を受けるようにして下さい。
近年では様々な検査が行われますが、MRIの普及によりCTでは分からなかった小さな病変をも見つけることができるようになりました。また自覚症状のない人にも脳梗塞病変がみられることがあり、無症候性脳梗塞と呼ばれていますが、この無症候性脳梗塞も高血圧などの危険因子を有する人に多く認められます。
脳梗塞は早期に治療を開始すれば後遺症を軽くできる場合があり、「ブレインアタック」として早期治療を啓蒙するキャンペーンが各地で行われています。以前は夜間や休日に症状があっても朝まで、また平日まで待ってから来院されるという方がおられましたが、症状が現れたらすぐに医療機関を受診するようにして下さい。また治療法においても低体温療法、遺伝子治療などの研究がなされており、今後脳梗塞治療の幅がさらに広がっていくものと思われます。
現在、脳血管障害は寝たきりになる最大の原因でありますが、脳梗塞によって寝たきりになる人が一人でも少なくなることを願ってやみません。
(怖がらないで現代病:香川医科大学医師会 編)
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