はじめに

膀胱は腎臓で作られた尿を貯留し、一定程度貯まったら排出するための臓器です。したがって膀胱の内側の粘膜は、腎臓でろ過され尿に排出されたあらゆる物質に絶えず晒されることになります。膀胱がんの危険因子の一つであるタバコはそのヤニの中に、発がん性の強いベンツピレンなどの芳香族炭化水素を多数含み、鼻から吸引され肺で吸収され、肝臓で代謝されたのち腎臓から尿中へ排泄されます。その結果、膀胱の粘膜は長時間発がん性物質に晒され膀胱がんが発生する原因となるわけです。

膀胱がん患者さんの多くは、突然出現する血尿に驚いて病院に来られます。膀胱にできた腫瘍の場所や腫瘍の種類によっては膀胱炎のような症状や排尿のしにくさなどで来院されることもあります。また、人間ドックや検診などで尿の中にわずかな血尿を見つけてもらい早期発見につながることもあります。膀胱がんの多くは後で述べますように内視鏡で摘出ができますが、一部は膀胱の壁深く進行するため時期を逸しないうちに膀胱を全部摘出する必要が生じます。この場合、患者さんは御自分の膀胱を失くしますので尿をためる袋を体外に装着するか、体内に人工膀胱を作成する必要があります。後者の人工膀胱は御自分の腸を利用するもので、手術は高度なものになります。しかし、われわれはなるべく患者さんの術前の生活状態を維持するため人工膀胱の手術を積極的に行っております。膀胱がんが膀胱を超えて進行している場合は、抗がん剤による治療が必要になりますが、抗がん剤治療に精通した医師が世界標準のお薬のメニューでなるべく苦痛のないように治療を行っております。

膀胱がんは御高齢になるほど罹患しやすく、御家族にも様々な影響のある困った病気ですが、医師や看護師、ソーシャルワーカーなどでチームを作り、患者さんの体力や御家族の支援体制などを見極め最適の治療法をお勧めできるよう毎日努力しております。

膀胱粘膜に限局した膀胱がんの治療

  • 経尿道的膀胱腫瘍切除(TUR-Bt):内視鏡で観察しながら、高周波電気メスを用いて腫瘍を根元から切除します。当施設ではTURIS(チューリス)という新しいシステムを用い、より安全な切除が可能になっています。
  • 抗がん剤やBCGの膀胱内注入療法:上皮内がんに対する一次治療、腫瘍の再発防止や進行がんへの進展防止を目的に外来で行っています。

膀胱の筋肉層に進行した膀胱がんの治療

  • 膀胱全摘除術:男性では前立腺、場合によっては尿道をすべて一緒に摘出します。女性では膣の前壁、場合によっては子宮を一緒に摘出します。膀胱の周囲のリンパ節も広範囲に摘出します。尿を体外に出す場合は尿管を直接外に出す皮膚ろう術か回腸を利用した回腸導管設置術を行います。尿道を使用できる場合、回腸を利用して人工膀胱を作成し尿道に吻合して御自分で排尿していただく「新膀胱」造設術を行います。
  • 抗がん剤と放射線による膀胱温存療法:腫瘍の大きさや数、発生部位、患者さんの体力などによっては、膀胱全摘術を施行せず抗がん剤と放射線の組み合わせで治療することもあります。

膀胱外進行例や転移例に対する治療

  • ゲムシタビン(製剤名:ジェムザール)とシスプラチンを併用したGC化学療法をメインにいくつかの有効な化学療法を行っています。化学療法に伴う吐き気はお薬により徹底的に予防します。

 

膀胱がん

 

 

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