シクロデキストリンは(CD)、グルコースがα-1,4結合で環状となったもので、6量体をα-CD、7,8量体をそれぞれβ-、γ-CDと呼びます。その内孔は、ジオキサン程度の疎水性で、サイズにあったさまざまな分子をゲストとして取り込むことから、酵素モデル化合物として注目を集めました。現在では、香味成分の安定剤として広く実用化され、また、最近、ドラッグデリバリーシステムにもその修飾体が用いられ、医薬の分野でも注目されています。当研究室では、CDとさまざまな分子との包接複合体を作製し、それらの3次元構造をX線結晶解析により決定し、CD−ゲスト間の相互作用を原子レベルで観ることにより、CDの包接能・包接形態について基礎的な研究を行っています。
下にCD・ビフェニルジカルボン酸(BPDC)包接複合体のX線結晶解析より決定した3次元構造を示します。CDはBPDCのような比較的大きな分子を包接する場合は、2分子で1分子のゲストを取り囲みます。また、興味深いことに、結晶中では、BPDCのカルボキシル基は、1つの水分子を介して他のBPDC分子と水素結合ネットワークを形成し、その結果CDは筒状に並んでいます。このように、ゲスト分子の大きさ・性質は、しばしばCDの包接形態や結晶中での並び方に反映されます。 (Kamitori et al. (1998) Carbohydrate Research 312, 177-181)
(Program MOLSCRIPT by Dr.Kraulisによる描画)