香川大学医学部薬理学同門会

会長挨拶


 香川医科大学薬理学教室は昭和56年(1981年)4月初代の安部陽一主任教授により開講されました。それから早いものでもう32年が過ぎようとしています。同門会の必要性はわかっていましたが、新設医大ということもあって、少ないスタッフでこの間研究や教育に忙殺され同門会どころではなかったというのが本音だったのでしょう。しかしこの間に教室からは大阪市立大学の岩尾洋教授、徳島大学の玉置俊晃教授と2人の他大学の教授を輩出しており安部陽一教授の指導力の賜物と感心致します。さらにこのたび平成19年(2007年)2月に2代目主任教授として生え抜きの西山成教授が就任され念願の同門会が発足しましたことを心からお喜び申し上げます。
 このように教室は順調に発展を続けているのですが、大学の外に目を向けますと、今の日本はいろんな意味で行き詰まっています。デフレ経済、領土問題、普天間問題、歴史的な円高、一向に進まない福島の復興、出口の見えない原発、急速な貧富の差の拡大と生活保護世帯の増加、老人問題と暗い話ばかりが目立ちます。腹立たしいのは、国政を担う政治家の体たらくと国民不在の政権争い。そしてついには国民の無関心です。多くの日本人は自信を失っています。
 ですから、そんな暗い話ばかりの中で山中教授によるiPS細胞のノーベル賞授賞は一筋の光明でした。久しぶりの日本人の快挙に多くの国民は勇気づけられたはずです。元々臨床家であった山中氏は「重症の患者さんを救う治療法をみつけたい」という志をつらぬき、臨床を辞め基礎に行き苦労の末夢を叶えたのです。
基礎医学は地道で華やかさはありません。しかしすぐれた研究は世の中を一変させる可能性を秘めています。没落しつつある日本の再生には医学だけでなく、すべての分野で基礎学問の充実が不可欠です。ところが現在、わが国の研究現場は、どうなっているのでしょうか。まさに学術の危機といえる深刻な事態です。「大学の構造改革」の名の下に国立大学や試験研究機関は、独立行政法人化され、国からの運営費交付金は毎年削減され、研究者は資金を獲得できる短期で成果のでる研究に追われ、自由で自主的な研究の条件を奪われています。若い研究者の多くは有期雇用のもと、将来不安のなかで研究し、無駄や失敗など許されない環境に追い込まれています。日本が 「科学立国」として発展するには、大学、研究機関の基盤的経費を充実し、基礎研究と若手研究者への支援を抜本的に拡大する方針転換が必要です。
今年は巳年です。十二支の「巳」は植物に種子ができ始める時期と考えられるとのことです。「漢書 律歴志」では「止む」の意味の「已」とし、草木の生長が極限に達して次の生命が作られはじめる時期と解釈されています。とすれば、今年は日本の国にとって一大転機となる変革の年にせねばなりません。この様な年に第1回の同門会を設立できたことは誠にめでたいことであります。2013年が厳しい中にも充実した年となる様祈っております。そしてこの会発足を契機に同門会の会員同士がこれまでにも増して仲良く、相互の交流がさらに深まることを祈念いたしております。同門会諸兄、諸姉におかれましては、一層のご理解とご協力を頂きますようお願い申し上げます。


香川大学医学部薬理学教室同門会
会長 安元 章浩
安元クリニック院長
(2013.1)

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