- 同意説明文書の作成
(1) 治験責任医師は、被験者となるべき者に当該治験の参加についての同意を得るに際しての同意説明文書を、治験依頼者及び治験事務局の協力を得て治験申込み前に作成する。
(2) 同意説明文書には、省令に掲げる次の16項目を明確に記載することが必要である。
(ア)当該治験が試験を目的とするものである旨
(イ)治験の目的
(ウ)治験責任医師の氏名、職名及び連絡先
(エ)治験の方法
(オ)予測される治験薬による被験者の心身の健康に対する利益(当該利益が見込まれない場合はその旨)及び予測される被験者に対する不利益
(カ)他の治療方法に関する事項
(キ)治験に参加する期間
(ク)治験の参加を何時でも取りやめることができる旨
(ケ)治験に参加しないこと、又は参加を取りやめることにより被験者が不利益な取扱いを受けない旨
(コ)被験者の秘密が保全されることを条件に、モニター、監査担当者及び治験審査委員会が原資料を閲覧できる旨(なお、治験依頼者がモニタリング及び監査の実施に際し、原資料(診療録、診療データ等)のコピーの持ち出しを希望する場合は、被験者の秘密が保全されることを条件にモニター及び監査担当者に持ち出しを許可する場合がある旨の記載が含まれていること)
(サ)被験者に係る秘密が保全される旨
(シ)健康被害が発生した場合における実施医療機関の連絡先
(ス)健康被害が発生した場合に必要な治療が行われる旨
(セ)健康被害の補償に関する事項
(ソ)当該治験の適否等について調査審議を行う治験審査委員会の種類、各治験審査委員会において調査審議を行う事項その他当該治験に係る治験審査委員会に関する事項
(タ)その他、当該治験に係る必要な事項
(3) GCPを遵守するためには、同意説明文書に少なくとも次の事項を含むことが必要である。なお、各事項の後に前項の関連事項名を付した。
(ア)治験が研究を伴うこと:(ア)関連
(イ) 治験の目的:(イ)関連
(ウ)治験責任医師又は治験分担医師の氏名、職名及び連絡先:(ウ)関連
(エ)治験の方法(治験の試験的側面、被験者の選択基準、及び無作為割付が行われる場合は各処置に割り付けられる確率を含む。):(エ)関連
(オ)予期される臨床上の利益及び危険性又は不便(被験者にとって予期される利益がない場合には、被験者にその旨を知らせなければならない。):(オ)関連
(カ)患者を被験者にする場合には、当該患者に対する他の治療方法の有無及びその治療方法に関して予測される重要な利益及び危険性(特に重篤な副作用、有害事象の発生頻度等):(カ)関連
(キ)被験者の治験への参加予定期間:(キ)関連
(ク)治験への参加は被験者の自由意思によるものであり、被験者又はその代諾者は、被験者の治験への参加を随時拒否又は撤回することができること。また拒否・撒回によって被験者が不利な扱いを受けたり、治験に参加しない場合に受けるべき利益を失うことはないこと:(ク)及び(ケ)関連
(ケ)モニター、監査担当者、治験審査委員会及び規制当局が原資料を閲覧できること。その際、被験者の秘密は保全されること。(なお、治験依頼者がモニタリング及び監査の実施に際し、原資料のコピーの持ち出しを希望する場合は、被験者の秘密が保全されることを条件にモニター及び監査担当者に持ち出しを許可する場合がある旨の記載が含まれていること)また、同意文書に被験者又はその代諾者が記名・捺印又は署名することによって閲覧を認めたことになること:(コ)関連
(コ)治験の結果が公表される場合であっても、被験者の秘密は保全されること:(サ)関連
(サ)被験者が治験及び被験者の権利に関してさらに情報の入手を希望する場合又は治験に関連する健康被害が生じた場合に照会すべき又は連絡をとるべき実施医療機関の相談窓口:(シ)関連
(シ)治験に関連する健康被害が発生した場合に被験者が受けることのできる補償及び治療:(ス)及び(セ)関連
(ス)治験に参加する予定の被験者数:(タ)関連
(セ)治験への参加の継続について被験者又はその代諾者の意思に影響を与える可能性のある情報が得られた場合には速やかに被験者又はその代諾者に伝えられること:(タ)関連
(ソ)治験への参加を中止される場合の条件又は理由:(タ)関連
(タ)被験者が費用負担をする必要がある場合にはその内容:(タ)関連
(チ)被験者に金銭等が支払われる場合にはその内容(支払額算定の取り決め等):(タ)関連
(ツ)被験者が守るべき事項:(タ)関連
(テ)治験審査委員会の手順書等を臨床研究支援センターのホームページで確認できる旨及び臨床研究支援センターのホームページアドレス:(ソ)関連
(4) 同意説明文書は、可能な限り専門用語は使わず、分かりやすく、読み易い表現にする。
(5) 同意説明文書には、被験者を惑わせたり、不利にするような言い回し、同意を促す表現を記載してはならない。
- 文書による説明と同意の取得
(1) 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者となるべき者を治験に参加させる時は、予め治験の内容、その他の治験に関する事項について当該者の理解を得るよう同意説明文書を用いて十分に説明し、治験への参加について自由意思による同意を文書により得る。
(2) 同意の能力を欠く等によって被験者となるべき者の同意を得ることは困難であるが、当該治験の目的上それらの被験者を対象とした治験を実施することがやむを得ない場合(例えば、未成年者や重度の認知症患者を対象とする場合)には、治験責任医師又は治験分担医師は、代諾者となるべき者に対して同意説明文書を用いて十分説明し、治験への参加について文書による同意を得るものとする。この場合、同意に関する記録とともに代諾者と被験者との関係を示す記録を残すものとする。
(3) 被験者となるべき者又は代諾者となるべき者が同意説明文書を読むことができないが、口頭又は他の伝達方法で、その内容を理解することができる場合には、説明に際して公正な立会人を要することとする。この場合には、被験者となるべき者又は代諾者となるべき者に加え、立会人も同意文書に記名・捺印又は署名し、自ら日付を記入するものとする。
(注):同意文書取得時における立会人
治験責任医師・治験分担医師及び治験協力者は説明をする側に位置する者であり、公正な立会人としては適当でない。
(4) 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者に対する直接の臨床的利益が予期されない非治療的治験においては、必ず被験者となるべき者から同意を得なければならない。(ただし、(5)に掲げる場合を除く。)
(5) 非治療的な内容の治験において、次の(ア)から(エ)に掲げる事項が全て満たされる場合には、被験者となるべき者の代諾者による同意を得て治験を行うことができる。このような治験は、例外が正当化される場合を除き、治験薬の適応となることが意図された疾病又は症状を有する患者において行われるべきである。また、治験責任医師又は治験分担医師は、このような治験における被験者に対しては、特に綿密な観察を行い、もし不当な苦痛を受けていると見受けられた場合には、治験を中止しなければならない。
(ア)治験の目的が、本人による同意が可能な被験者による治験では達成されないこと。
(イ)被験者に対する予見しうる危険性が低いこと。
(ウ)被験者の福祉に対する悪影響が最小限とされ、かつ低いこと。
(エ)代諾者となるべき者の同意に基づいて被験者を治験に組み入れる旨を明示した上で治験審査委員会に承認の申請がなされ、かかる被験者の参加を承認する旨承認文書に記載されていること。
(6) 緊急状況下における救命的な内容の治験であって、被験者となるべき者から事前の同意を得ることが不可能である場合においては、被験者となるべき者の代諾者からその同意を得るべきである。被験者となるべき者の事前の同意が不可能で、かつ、被験者となるべき者の代諾者と連絡が取れない場合には、次の(ア)から(オ)の全てに該当する場合に限り治験に参加させることができる。
(ア)被験者となるべき者に緊急かつ明白な生命の危険が生じていること。
(イ)現在利用可能な治療方法では十分な効果が期待できないこと。
(ウ)被験薬の使用により被験者となるべき者の生命の危険が回避できる可能性が十分にあると認められること。
(エ)予測される被験者に対する不利益が最少限度のものであること
(オ)代諾者となるべき者と直ちに連絡をとることができないこと。
(7) 説明及び同意の取得は以下の手順で行う。
(ア)治験の社会的重要性の説明
(イ)院内の治験体制の説明
(ウ)立会人がいる場合(被験者の関係者以外)は、その理由の説明
(エ)治験内容の説明
(オ)同意文書(運用書式12(標準例)による同意の取得
(カ)同意文書(運用書式12(標準例)の写しの交付
治験責任医師又は治験分担医師は、(オ)により記名・捺印又は署名した同意文書(運用書式12(標準例)の写し(被験者交付用)を被験者(代諾者の同意を得た場合にあっては代諾者)に交付する。
(キ)同意文書(運用書式12(標準例))の写しの提出
治験責任医師又は治験分担医師は、治験薬の処方に先立ち、同意文書(運用書式12(標準例)の写し(薬剤部提出用)を薬剤部に提出する。
(ク)同意文書(運用書式12(標準例)の保管
治験責任医師又は治験分担医師は、同意文書(運用書式12(標準例)(診療録貼付用)を診療録(カルテ)に貼付して保存する。