- 治験コーディネーター(以下CRCという。)の指名
CRCの業務は、病院長からCRCとして任命された臨床研究支援センター職員が行う。個々の治験について、その担当となるべきCRCは、治験の申し込みに先立ち、臨床研究支援センター副センター長(治験コーディネート部門担当)が当該治験の治験責任医師と協議の上、必要に応じて決定する。当該治験の担当となるCRCは、治験の申請の際、治験協力者としてその業務の内容と共に治験業務分担一覧表(別紙様式第3号)に記載され、IRBの審査を経て承認されることによって指名される。
- 依頼者側担当者からのヒアリング
(1)CRCとなるべき者は、依頼者が提出した審査用に提出する予定の資料(治験実施計画書、治験薬概要書、症例報告書の見本、同意説明文書の見本等)を熟読し、問題点、疑問点を洗い出しておく。
(2)CRCとなるべき者は、治験事務局職員が行うヒアリング[治験事務局の業務手順を参照]に同席し、治験薬の概要、予想される副作用、治験スケジュール、被験者の選択基準及び除外基準、症例登録手続き、群間比較試験の場合の割り付け方法、臨床検査項目、保存すべき原資料の範囲等を確認する。また、前項の問題点、疑問点を解決する。
(3)CRCとなるべき者は、依頼者側が特に希望する業務(被験者への器具等の使用方法の説明、服薬日誌等の記入方法の説明等)があればその内容を確認する。
(4)CRCとなるべき者は、治験を進めるにあたり必要な資料・物品(ワークシート、外注検査用のキット等)を確認し、そのリストを作成する。また、必要に応じて依頼者側担当者に、治験を適正に実施するうえで、使用すれば有効と考えられるゴム印やシール等の作成を依頼する。
(5)CRCとなるべき者は、本院で治験を実施するに当たって、依頼者側が用意した同意取得のための説明文書に不備な点があれば指摘し、また必要に応じて適当な文面を示して、IRB審査用の同意説明文書の作成と治験責任医師の同意を得ることを依頼者側に依頼する。
- 業務内容の決定
(1)CRCとなるべき者は、当該治験におけるCRCの業務内容を、治験依頼者、治験責任医師、臨床研究支援センター副センター長(治験コーディネート部門担当)と協議し、必要に応じて治験コーディネーターの業務内容(運用様式第8号)を治験責任医師と共に2部作成し、1部を治験責任医師に保管依頼し、1部を保管する。
(2)CRCとなるべき者は、決定した業務内容を氏名と共に治験協力者として治験業務分担一覧表(別紙様式第3号)に記載するよう治験責任医師に依頼する。なお、治験コーディネーターの業務内容(運用様式第8号)を作成する場合、分担する業務の内容記入欄には「別紙の通り」と記載して、運用様式第8号の写しを添付する。
(3)治験責任医師は、前項の治験業務分担一覧表(別紙様式第3号)と共に、申請に先立ち治験事務局に提出する。
- 開始時協議
(1)CRCは、治験の開始に先立ち、治験責任医師との間で、業務の細かな分担、連絡方法等を協議する。また、被験者との面談の方法等を協議しておく。
(2)CRCは、治験の開始に先立ち、治験責任医師の協力を得て、外来または病棟の看護師、医師等、当該治験の被験者に関わる予定のあるスタッフにCRC業務を行うことを連絡する。
- 開始時協議
以下の業務は、CRC、治験依頼者側担当者、治験責任医師及び臨床研究支援センター副センター長(治験コーディネート部門担当)が協議のうえ、個々の治験において実施するか否かを決定する。
1 ) 被験者のリクルート及びスクリーニング
(1)CRCは、治験責任医師がリクルートした被験者候補について、選択基準及び除外基準に照らして、被験者としての資格をスクリーニングする。その際、当該治験で用意されている登録用紙を利用しても良い。
(2)CRCは、治験責任医師の依頼を受け、または治験責任医師に働きかけて、治験責任医師から示された患者の中から被験者候補を検索する。
2 ) 説明と同意の取得
(1)CRCは、被験者候補の来院日までに同意説明文書及び承諾書(別紙様式第9号)を準備し、必要に応じ、同意説明文書に連絡先(担当医師、相談窓口)を記入する。
(2)CRCは、治験責任医師又は治験分担医師が被験者候補に同意取得のための説明を行う際に、同席し、または説明が行われた後に治験期間、検査項目、スケジュール、費用、負担軽減費の支給等について補足説明を行い、また、治験に関する質問及び相談に答える。その際、可能な限り、被験者候補が内容を十分理解でき、参加について十分考慮でき、また必要であれば第三者に相談できる時間を取れるよう配慮する。
(3)CRCは、被験者候補に補足説明した治験において同意が得られた場合は、承諾書(別紙様式第9号)の治験協力者の欄に記名・捺印又は署名し、日付を記入し、最終的な記載事項の確認を行う。
(4)CRCは、被験者候補に補足説明した治験において同意が得られた場合は、得られた承諾書の診療録貼付用を診療録に綴じ込み、被験者交付用を被験者に交付し、終了報告書添付用を治験責任医師に保管依頼し、薬剤部提出用及び患者サービス課提出用を薬剤部に提出するか、またはこれらの作業を担当医師に依頼する。
3 ) 患者情報収集
(1)CRCは、治験開始までに被験者と面接し、被験者の家族・社会的背景、既往歴、他院への通院の有無、他院等での併用薬の有無等、治験参加に対しての不安や疑問の有無を確認し、被験者情報記録(運用様式第9号)に記入する。
(2)CRCは、医療情報端末等から被験者基本情報及び、処方、検査結果等の情報を入手し、治験経過記録(運用様式第10号)に記入して、被験者毎に作成したファイルに被験者情報記録(運用様式第9号)その他被験者の治験に関する記録と共に保管する。
(3)CRCは、必要に応じて、病歴室にて、または病歴室から借り出して診療録を閲覧し、被験者の治験の進行に関する情報を収集して被験者情報記録(運用様式第9号)及び治験経過記録(運用様式第10号)に記入する。
4 ) スケジュール管理
(1)CRCは、治験開始時に治験中の担当医師が行うべき処方、検査、問診等、実施計画書中に要求されている項目及び治験開始(期間変更・終了)通知書(運用様式第7号:Z.治験の手続き参照)の送付、治験のための来院通知書の送付等の院内諸手続きを時系列で記載したスケジュール一覧を依頼者側担当者の協力を得て被験者毎に作成し、被験者の来院前等、必要の都度、担当医師に送付して注意を喚起する。送付した旨とその内容を日付と共に治験経過記録(運用様式第10号)に記載する。
(2)CRCは、治験開始時に治験中の被験者が行うべき来院(受けるべき検査、処方)、服薬、自己の症状の記録等、実施計画書中に要求されている項目を時系列に記載したスケジュール一覧を依頼者側担当者の協力を得て被験者毎に作成し、被験者の来院時等、必要の都度、被験者に交付し、または担当医師に交付を依頼して注意を喚起する。また、必要に応じて、被験者の来院予定日前日等に、被験者に電話連絡を行い来院日時等を確認し、被験者の都合で来院できない場合は担当医師と連絡を取り、来院日を変更する。交付または交付を依頼した旨とその内容、及び被験者への電話連絡内容をを日付と共に治験経過記録(運用様式第10号)に記載する。
(3)CRCは、治験開始時にCRC自身が行うべき行為(前2項のスケジュール管理を含む)を時系列に記載したスケジュール一覧を作成し、これを基に業務時間の調整を行う。
(4)CRCは、治験開始時に治験に伴う併用禁止薬、併用制限薬一覧を作成し、診療録に綴じ込んで、他科の医師に対して注意を喚起する。
(5)CRCは、治験実施中、被験者の来院予定日前日等に被験者への電話連絡を行い、受診日の確認、残薬等持参すべきものの確認を行う。確認した内容を日付と共に治験経過記録(運用様式第10号)に記載する。
5 ) 被験者との面接
(1)CRCは、必要に応じて被験者との面談を行い、服薬状況、有害事象の有無、併用薬剤の有無を確認する。面談した内容を日付と共に治験経過記録(運用様式第10号)に記載する。
(2)CRCは、必要に応じて治験相談窓口の担当となり、電話または面談により被験者からの相談及び質問に応える。その際は、相談、質問及びそれに対する回答内容を日付と共に治験経過記録(運用様式第10号)に記載する。また、その内容を担当医師に報告する。
6 )治験薬の処方及び被験者による服用等の管理
(1)CRCは、被験者に治験薬の服用方法、残薬、空容器等の回収方法、服薬日誌の記入方法等の説明を行う。説明した内容を日付と共に治験経過記録(運用様式第10号)に記載する。
(2)CRCは、必要に応じて被験者から残薬、空容器等を回収し、担当医師に報告の上薬剤部に返却する。返却した旨及び回収した数量を日付と共に治験経過記録(運用様式第10号)に記載する。
(3)CRCは、治験薬処方に際して、処方予定日前日等に担当医師に処方治験薬名、用量・用法等のリストを交付して処方を支援する。その際、必要に応じて治験開始(期間変更・終了)通知書、治験のための来院通知書及び承諾書の写しの送付等、各部署への連絡を併せて依頼する。[スケジュール管理の項を参照]
7 ) 検査の管理
(1)CRCは、外注検査がある場合、予め治験依頼者側担当者、外注検査委託業者、治験責任医師と、外注検査用キット(以下キットという。)の保管、検体採取方法及び保存方法等について打ち合わせを行い、キットを検査実施まで保管する。
(2)CRCは、外注検査実施に際してキットを担当医師または検体採取係の元に持参し、検体採取を依頼し、検体を保管する。外注検査委託業者に連絡し、検体の回収と測定を依頼する。
(3)CRCは、また、外注検査結果を、担当医師とは別途に送付してもらい、治験経過記録(運用様式第10号)に貼付し保管する。
(4)CRCは、治験のための検査が実施される際は、検査前日等に担当医師に検査リストを交付して検査の欠落を防止する。[スケジュール管理の項を参照]
8 ) 症例報告書の作成補助
(1)CRCは、必要に応じて症例報告書の記載項目の内、検査値等、判断を伴わない項目の記載を補助する。その際は、必ず担当医師の監修を受ける。
(2)CRCは、症例報告書の治験依頼者への提出に先立ち、記入漏れ、訂正印、署名・捺印の漏れ等をチェックする。また、終了報告書添付用の写しを作成する。
9 ) 有害事象発生時の対応
(1)CRCは、他施設あるいは海外で発生した有害事象の報告を治験責任医師と共にCRCにも送付されるよう依頼しておき、送付された場合、IRBでの説明(意見書作成)の補助を行う。
(2)CRCは、院内で副作用、重篤な有害事象が発生した場合は、治験実施計画書及び本院の規程に従い、治験責任医師が必要な手続きを行うための補助を行う。具体的には必要書式の準備、記入項目の情報の収集、書類の提出等である。
10 ) 同意説明文書の改訂
(1)CRCは、IRBにて同意説明文書の改訂を条件に承認された場合等、治験依頼者側担当者及び治験責任医師と協議して同意説明文書内容を変更し、治験依頼者側担当者に同意説明文書変更届け、及び改訂された同意説明文書をIRB審査書類として提出するよう依頼する。
11 ) 治験の終了手続き
(1)CRCは、治験症例が終了または中止となった場合は、担当医師に対して患者サービス課へ治験終了通知書(運用様式第7号:Z.治験の手続き参照)を送付するよう依頼する。
(2)CRCは、治験症例が終了または中止となった場合は、担当医師に対して可及的速やかに症例報告書を作成するよう依頼し、症例報告書の作成補助を行う。
(3)CRCは、治験が終了または中止となった場合は、担当医師に対して、治験(終了・中止)報告書(別紙様式第16号)を提出するよう依頼し、判断を伴わない項目の記載を補助し、また添付する症例報告書の写しを提供する。
12 ) モニタリング及び監査への対応
(1)CRCは、予め治験依頼者側担当者に対してモニタリング及び監査の申し込みを行うときはCRCに連絡するよう申し入れておく。
(2)CRCは、モニタリング及び監査の申し込みがあった場合は、治験責任医師と協議してモニタリングまたは監査当日にCRCと担当医師の対応分担を決定する。ただし、CRCが対応の全てを行うことはできない。
(3)CRCは、必要に応じてモニタリング及び監査の申し込みの際に必要とされた資料の準備を補助する。
(4)CRCは、必要に応じてモニタリング及び監査のための場所として臨床研究支援センターの部屋の使用を申し入れ、許可を得る。
(5)CRCは、モニタリングまたは監査当日に自らの対応が終了した後、担当医師に連絡し、不明内容の確認と担当医師の対応を依頼する。
(6)CRCは、モニターまたは監査担当者から原資料のコピーの持ち出しを希望された場合は、同意説明文書中にコピーの持ち出しを認める旨の文章が記載されていることを確認した上で、CRC立ち会いの元でのコピーを許可し、コピー中に被験者のプライバシーに関する内容が含まれていないことを確認した上で持ち出しを許可する。
13 ) 書類の保管
(1)CRCは、自らが作成した被験者情報記録(運用様式第9号)、治験経過記録(運用様式第10号)及びその他の記録、資料を被験者毎にファイルし、治験終了まで保管する。治験終了後は治験事務局に依頼して、治験事務局が保管する当該治験に係る書類と共に保管する。
(2)CRCは、治験責任医師の保管すべき書類(終了報告書用承諾書の写し、症例報告書用紙等)を治験責任医師の依頼により治験終了まで保管する。終了報告書提出時等必要に応じて返却し、書類等の提出を依頼する。