肝胆膵外科

肝胆膵外科学会高度技能
専門医修練施設(A)

 当院は肝胆膵の高難度手術を安全に施行できる病院として、日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医修練施設に指定されています。一般病院では難しい肝胆膵の高難度手術を積極的に行い、極めて良好な成績を上げてきました。当院では高難度手術を直近の5年間で300件以上行っている修練施設(A)であり、香川県内では当施設のみ、全国では約120施設がその認定を受けています。

肝胆膵高難度手術症例数の推移
(日本肝胆膵外科学会規定による)

中四国初! 膵臓・胆道センター開設

 2023年に新設された『香川大学医学部附属病院膵臓・胆道センター』では、消化器外科 教授である岡野圭一がセンター長となり、消化器内科・腫瘍内科・消化器外科・放射線診断科などの専門家の知見と技術を集結して、難治癌である膵がんや胆道がんなどの膵臓・胆道領域の診断・治療に取り組んでいます。

膵(すい)癌

 膵癌は各種の癌の中で最も悪性度が高く、手術のみでは根治できない症例が大半を占めます。膵癌の治療成績の改善を目的とした術前治療に関して、当科では切除可能膵癌および主要な動脈接触を伴う切除可能境界型膵癌に対する2週間の術前化学放射線療法(sNACRT)(S1+放射線療法30Gy)の臨床試験を10年ほど前に開始し、良好な治療成績を英文誌 Annals of Surgical Oncology(24(9):2777-2784, 2017)で報告しました。日本での多施設共同臨床試験(Prep-02/JSAP05)の結果が国際学会で報告され、切除可能型膵癌における術前化学療法(gemcitabine+S1)の有用性が示され、我々の報告と同様、術前治療の有効性を支持する結果となりました。このPrep-02/JSAP05と香川大学におけるsNACRTを比較すると、切除可能型膵癌において治療に関連する副作用が少なく、局所治療効果に優れ、全生存率も遜色ないことがわかりました。

 さらに成績の向上を目指し、5週間の術前化学放射線療法(S1+放射線療法50Gy)を臨床試験として行い、症例の登録も終了しています。この結果により、最適な術前化学放射線療法をより科学的に選択できます。現在は、gemcitabinを加えた5週間の術前治療レジメン(gemcitabine+S-1+放射線療法50Gy)による臨床試験を進めています。

 また、予後が悪い動脈接触を伴う切除可能境界型膵癌は潜在的な遠隔転移の可能性が高く、このタイプの膵癌に対しては、腫瘍内科と連携し臨床試験として強力な術前化学療法を行うことで治療成績の改善を目指しています。
 さらに、癌の進行度が高く診断時に切除不能と考えられた局所進行膵癌に対しても、化学療法や化学放射線療法を駆使し、奏効した症例には、R0根治切除(癌の組織学的遺残のない手術)が施行できるようになっています。現在、5年以上無再発生存例も認められ、画像検査の一つであるFDG-PETによる治療効果判定がその病理像を良く反映していることもJapanese Journal of Clinical Oncology(48(5):434-441, 2018)誌で報告しました。

《資格取得者》
日本肝胆膵外科学会高度技能専門医:岡野圭一、大島稔、須藤広誠

閉じる

肝・胆道癌

 肝・胆道癌においても、効果的な化学療法が確立されていないため、手術による根治切除が有効な治療法となっています。広範囲の肝切除が必要な場合、術後の肝不全が重篤な合併症となります。当科では、さまざまな方法(ICG検査、ヒアルロン酸値、M2BPGi値、GSAシンチグラフィ)を行うことで術前に個々の患者様の肝機能を十分に評価しています。術後肝不全のリスクが高い場合には、放射線診断科の協力のもと術前門脈塞栓術を行うことで肝切除後に残る予定の肝臓体積を肥大させてから手術を行います。最新の画像診断装置で術前に手術のシミュレーションを行い、その安全性には常に配慮しています。

閉じる

腹腔鏡下肝胆膵手術

 日本内視鏡外科学会技術認定(肝)を取得し、積極的に腹腔鏡下肝胆膵手術を行っています。肝胆膵手術における腹腔鏡下手術では、創部縮小による整容面だけでなく、拡大視効果による細かな手術や手術中の出血量の減少などにより、患者様への術中術後の負担軽減が臨め、術後在院日数は短縮しています。安全に行うことが出来れば、非常にメリットの高い手術方法になります。

《資格取得者》
日本内視鏡外科学会技術認定(肝):岡野圭一、大島稔

腹腔鏡下肝切除術

 当科では2001年から肝切除術に腹腔鏡を導入し、より多くの手術件数を経験してきました。平成28年度の診療報酬改定により、
『K695-2 腹腔鏡下肝切除術(亜区域切除,1区域切除(外側区域切除を除く.)、2区域切除及び3区域切除以上のもの)』 の術式が診療報酬に採択され、これらを施行するための施設基準も厳格に定められました。
 当科では、この施設基準を満たし認定を得て、適応拡大術式にもより安全な手術を行えるよう努力しています。

閉じる

腹腔鏡下膵切除術

 2007年に倫理委員会の承認を得て腹腔鏡下・補助下膵切除を開始しています。現在まで28例に腹腔鏡下・補助下膵切除を施行しています。適応は良性・低悪性度の膵体尾部腫瘍です。予定外の開腹移行や重篤な合併症(Clavien Dindo分類 Ⅲb以上)は認めません。
 「腹腔鏡下膵体尾部切除術・膵頭部腫瘍切除術・腹腔鏡下十二指腸局所切除術」に関して施設基準を満たし、認定を取得しています。

閉じる

ロボット支援下尾側膵切除術

 2022年よりロボット支援下手術(da Vinci)の膵体尾部切除術を導入しました。2023年7月までに19例に実施し、術後膵瘻は0%であり術後在院日数も約10日とより低侵襲な手術が可能となりました。患者様への負担を軽くすることで術後補助化学療法を短期間で開始できるメリットがあると考えております。
また、今年度には境界悪性腫瘍に対するロボット支援下膵頭十二指腸切除術を開始予定です。
先天性胆道拡張症に対する手術に対しても、腹腔鏡下だけでなくロボット支援下手術の導入も、現在準備を進めております。

《資格取得者》
Da Vinci Robot Surgery: 術者certificate:岡野圭一、大島稔
ロボット支援膵体尾部切除プロクター:岡野圭一

腹腔鏡下・
用手補助下脾臓摘出術

 消化器内科(肝臓グループ)との協力のもと、肝硬変による脾腫・脾機能亢進症に対して積極的に腹腔鏡下・用手補助下(HALS)脾臓摘出術を施行しています。2008.1-2015.6に当科でHALS脾臓摘出術を施行した50例において、開腹移行は4例(8%)であり、侵襲を必要とする術後合併症は1例(2%)で手術関連死は認めていません。血小板数や白血球数の有意な増加が得られており、Child-Pugh scoreがBの肝硬変症例に対しては、術後の肝機能の改善を認めており、脾臓摘出が肝機能維持・改善に寄与している可能性が示唆されています。

閉じる

膵臓移植

はじめに

 香川大学医学部附属病院では1型糖尿病の患者様に対して脳死下臓器提供 膵(すい)臓移植ならびに膵臓・腎臓同時移植を実施しております。実施施設は全国で18施設が認定されており、四国では唯一、香川大学医学部附属病院で実施可能です。腎不全を伴った1型糖尿病患者様に対する膵臓腎臓同時移植は、インスリン注射や透析療法から離脱でき生活の質が改善するだけでなく、生命予後も改善できる医療です。

脳死膵臓移植とは

 1型糖尿病は自分の膵臓からのインスリン分泌が枯渇(こかつ)して発症する病気です。2型糖尿病と比較すると発症が若く、学童期に突然発症することも多いのが特徴です。1型糖尿病は補充療法としてインスリン注射が必要となりますが、血糖コントロールが難しく、多くは動脈硬化の進行および糖尿病合併症(腎障害、網膜障害、神経障害など)を認めます。また、頻回の低血糖発作をきたす症例も多く、生命予後にも影響します。1型糖尿病で糖尿病性腎症を発症すると、頻回のインスリン自己注射や週に3回の透析が必要となるため、普段の生活は制限されます。
1型糖尿病の治療、1型糖尿病による重篤な合併症(心、脳、神経、網膜における血管障害)の予防、および糖尿病性腎症の治療として、脳死ドナー(脳死により臓器を提供していただく方)からの膵腎同時移植が世界各国で確立された治療法として広く行われています。
膵臓移植後は、毎日の血糖測定とインスリン注射から解放され、低血糖になる危険性もなくなります。また、前述した糖尿病合併症の進行を止める、あるいは改善させることができます。既に腎不全になっており、透析を受けておられる患者様には、同時に行う脳死腎臓移植により透析からも解放されます。すなわち生活の質を著しく改善し、社会復帰を可能にすることがこの治療法の主たる目的ですが、生命予後も格段に改善されることがわかっています。2006年4月から脳死下での膵臓移植は一般的な治療として保険適用となっています。

※膵臓移植中央調整委員会資料より引用

  • 当院での膵臓移植

  • 当院での膵臓移植

  • 日本膵・膵島移植研究会HPより

当院における脳死膵臓移植の現況と成績

 当院は2009年に膵臓移植実施施設に認定されました。病院全体で移植医療の推進に力を入れており、膵臓移植移の際には当科のみならず、移植医療に携わる泌尿器科、腎臓内科、糖尿病内科、麻酔科などが連携をとり、治療に当たっております。2023年4月現在までに、当院で9例の膵臓腎臓同時移植と1例の腎移植後膵臓移植を実施致しました。移植後の成績として、8例が良好な膵臓機能を維持しており、インスリン注射が不要となっております。現在までの移植臓器の生着率は膵臓が80%、腎臓が89%となっています。また、多くの方が膵臓移植後に完全社会復帰を果されています。

《資格取得者》
日本移植学会認定医:岡野圭一、大島稔、須藤広誠

連絡先

 膵臓移植についてさらによく知りたい方は下記までご遠慮なくご連絡ください。

  • 〒761-0793 香川県木田郡三木町大字池戸1750-1

香川大学医学部附属病院

香川大学医学部附属病院 087-898-5111

〒761-0793香川県木田郡三木町池戸1750-1

  • 消化器外科
  • 外科外来 087-891-2273

    消化器外科医局 087-891-2438

外来診療案内消化器一般(消化管・肝胆膵)

火曜日 木曜日
午前 午後 午前 午後
岡野 圭一 大島 稔 岡野 圭一 大島 稔
西浦 文平 岸野 貴賢 隈元 謙介 安藤 恭久
松川 浩之 浅野 栄介 須藤 広誠 近藤 彰宏
移植専門外来 馮 東萍    
PAGETOP