臨床心理学科紹介

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臨床心理学科長
竹森 元彦

香川大学医学部臨床心理学科は、国立大学医学部では初めて、平成30年4月に新設されました。さらに、令和2年4月、修士課程として、香川大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻を設置しました。
特筆すべきは、そのカリキュラム・内容および教員の指導体制です。ぜひ、本学科をご覧ください。
本学科の特徴は次の通りです。
第1点として、本学科と大学院のカリキュラムは、国家資格である「公認心理師」に対応しています。また、大学院では、日本臨床心理士資格認定協会による「臨床心理士」の受験資格を得ることができます。ダブルライセンスが取れるカリキュラムです。
第2点として、20人という少人数が魅力です。それぞれの顔が見える教育ができます。一緒に同じ目標である心理援助の専門家を目指すので、活気に満ちています。
第3点として、医療系の心理実習の充実です。
本学科のカリキュラムは、1年生の段階から、『心理学概論』では、医学科・看護学科の学生との共通の時間があり、自然と、他学科との交流がはじまります。さらに『早期体験学習』では、地域の福祉施設などを医学科の学生と共に訪問するなど、「チーム医療」や「多職種連携」について学びます。異なる学科の学生が一緒に学ぶことは、臨床心理学科の学生にとっても、他学科の学生にとってもよい学びとなり、互いの学習意欲が高まります。
4年生の「心理実習Ⅱ(チーム医療実習)」では、附属病院の精神科・小児科・腫瘍内科など、心理職が実際に働いている重要な診療科の見学実習がはじまります。大学院での医療心理実習を含めると、3年間にわたって医療心理実習を学ぶことができます。附属病院がある本大学だからこそ、現場での学びの積み重ねができます。
医学科の教員から直接に講義を受ける授業もあります。例えば、『病理学・免疫学概説』『災害医学・緩和ケア』などです。臨床心理学科の学生のために開講する科目ですので、心理援助者に必要な医学の基礎について学ぶことができます。
第4点として、カウンセリング・コミュニケーションの基礎を、段階的に学ぶことができるカリキュラムになっています。2年生~4年生にかけては、カウンセリングの基礎を学ぶことができる『演習科目』が複数あります。例えば、『心理実習Ⅰ』ではカウンセリングの紙上訓練を行い、『心理演習Ⅱ』のロールプレイの演習では、教員によるグループ指導を受けながら、段階的にカウンセリングの姿勢を身に着けることができます。ここでの基礎的な学びが、大学院での「心理臨床相談室」(臨床心理士の養成施設)でのケース担当へと繋がっています。
第5点として、教育、福祉、司法・矯正等の現場と方々とのつながりのなかで、実践から学ぶことができます。2年生の『公認心理師の職責』では、病院や家庭裁判所・少年鑑別所などを訪問・見学して、現場の心理職の先生方に学びます。3年生、4年生では、学内外の施設での実習が用意されています。附属病院との連携、地域の教育・福祉施設で、実際に利用者や職員の方々と交流しながら、現場の実践に身を置き学ぶことができます。これも、少人数ならではの魅力です。
第6点として、実践力を持ち、バランスの良い多様な専門性を有した教員による教育指導体制です。臨床心理学科では、臨床心理学・心理学系の教員11名(教授等9名、助教2名)と、精神医学、心療内科学の教員各1名によって構成されています。20名の学生に対して、きめ細やかな指導、顔の見える教育を行うことができることも、本学部・大学院の特徴です。

*大学院の入学定員は、令和5年度は10名ですが、令和6年度より、入学定員13名になる予定です。これにより、学部から大学院へのスムーズな接続が可能となります。

《医学系研究科 臨床心理学専攻(大学院)の特色》

本大学院は、教育学研究科での臨床心理士養成の長い経験を引き継ぎ、医学系研究科に移設することで、医学的要素を持ち多職種連携・協働、チーム医療に強い心理職を養成するために誕生しました。
第1点として、学部での4年間の臨床心理学の学びのうえに、さらに、大学院での学びを継続することで、より専門性・実践力のある心理職の養成をめざします。学部に引き続き、附属病院での実習を継続します。3年にわたる医療施設での実習によって、より深い理解を学び、現場をよく知った心理職を養成します。
具体的には、1年生の『心理実践実習A』では、地域医療施設での心理実習、『心理実践実習B』では、地域の福祉・教育施設での実習、2年生の『心理実践実習C』では、精神・神経領域病院心理実習、『心理実践実習D』では、身体領域病院実習など、多様な施設実習とその振り返りによって、多職種連携及び各領域での心理職の実際などを学べます。
第2点として、本専攻は、公認心理師と臨床心理士のカリキュラムに対応しています。ダブルライセンスを目指します。
臨床心理士の養成施設である「心理臨床相談室」における外部の相談活動は、本大学院の特徴です。高松市内の幸町キャンパスと、三木町キャンパスの2か所に相談室を有し、そこで大学院生自身が相談活動を行います。ケースカンファレンスやスーパーヴィジョンによる支援など、支援体制も充実しています。
第3点として、講義科目だけではなく、ロールプレイの演習や試行カウンセリングなどの段階をへて、少しずつ、クライエントを大切にしたカウンセリングの姿勢や態度などを学びます。相談担当については、教員が、個別のスーパーヴィジョンを行いますので、一緒に基礎から学ぶことができます。
第4点として、臨床心理学科では、臨床心理学・心理学系の教員11名(教授等9名、助教2名)と、精神医学、心療内科学の教員各1名によって構成されています。学部教育でもお示しした通り、実践力を持ち、それぞれの専門性を有した教員による教育指導体制があります。研究について、臨床心理学と医学の視点を融合した研究をすることができます。
第5点として、心の専門家としての倫理的姿勢の学びを大切にします。心理援助者に求められる姿勢として、クライエントに真摯に向き合い、その言葉に耳を傾け、受け止めるということがあります。人と人が関わることは知識では学べないものであり、このような専門家としての姿勢を大切にしています。そのクライエントを中心に置きながら、他の専門家と連携する力を含めて、ぜひ、身に着けてもらいたいと思います。
第6点として、四国周辺の心理援助者養成機関との連携ネットワークを作りながら、地元・香川県の心理的支援に貢献し、さらには、全国や世界へ情報を発信できる学科・専攻(大学院)を目指しています。

香川大学医学部臨床心理学科長 竹森 元彦

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