2018年12月末現在、日本におけるHIV感染者/エイズ患者の累積数は約29,000人で、年間約1,300~1,400人が新たにHIV感染者/エイズ患者と診断されています。治療の進歩や予防啓発などの地道な努力により、最近は、年間の発症報告数が横ばいになってきています。同性間性的接触による感染で20~40歳代の男性を中心に増加していますが、中高年の男性での感染例や異性間性的接触による男性及び女性の感染例も報告されています。少数ですが、母子感染による小児例や薬物による例もあります。香川県では累計121名がHIV感染者/エイズ患者と診断されており(2018年12月末現在)、最近5年間では毎年2~16名の新規発症が報告されています。香川県では、新規発症例のうちAIDSを発症して初めて診断される症例(いきなりAIDS)の比率が全国平均より高く、HIV感染症の診断の遅れが課題となっております。
当院は、2003年12月から香川県内にある5つのエイズ診療拠点病院のひとつとしてHIV/AIDS診療を行っております。現在まで、50例以上の症例を経験し、最近では、HIV感染妊婦の出産例や母子感染によるHIV感染小児例も経験しました。また、香川県エイズ診療中核拠点病院(2008年3月~)として、①各種関係職種からなるチーム医療によるHIV/AIDS診療体制を確立し実践すること、②県内の他の拠点病院等に対する研修事業や医療情報の提供、③他院におけるHIV診療への協力や針刺し事例への対応、④HIV感染症/エイズを理解してもらうための啓蒙活動を行っております。それらに対応するために、HIV/AIDS対策室が設置され(2010年)、内科医・歯科医・看護師・薬剤師・ソーシャルワーカー・臨床心理士・栄養士が参加して年6回の室員会議を開催しています。症例検討、研修会報告、院内外への啓蒙活動、院内のHIV/AIDS診療体制の充実など、HIV/AIDSに関する課題について検討しております。