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研究内容(小川)

【研究内容】

希少糖の虫歯菌ストレプトコッカス ミュータンスに対する作用の研究

【研究の概要】

歯牙う蝕(虫歯)は全人類において発生率の高い疾患であり、その原因は砂糖と口腔内常在菌のストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans以下「S. mutans」と略)とされている。希少糖の一つ、キシリトールは日常生活において嗜好品・食品に添加使用されており、もうすでに高い「虫歯抑制効果」を示していることは広く一般に知られている。一方、われわれの香川大学希少糖グループは、何森らが各種の新しい希少糖の生産に成功し、既にこれら希少糖の生体に対する作用を、初期実験により確認している。そこで、キシリトールとは異なる、新しい希少糖のS. mutansに対する作用を検証し、「虫歯予防効果」を有する糖を発見することを目標とし研究を進めている。

【実験の内容】

S. mutansが虫歯菌と言われる理由は、①口腔内常在性菌、②糖より酸を産生する、③歯垢(プラーク)の基となる不溶性グルカンを産生、これらの点に起因する。
一方、希少糖の一つ、キシリトールは、S. mutansの増殖や酸産生、グルカン産生を抑制することがすでに報告され、菓子などにすでに利用されている。
以上のことから、われわれのグループでは、現在、新しい希少糖のうち、D-プシコース、D-タガトース、L-プシコース、L-タガトースのそれぞれを虫歯の原因菌であるS. mutansの培養液に添加し、S. mutansの増殖や酸産生、不溶性グルカンの形成等への影響を調べ、キシリトールに代わる新しい低う蝕または抗う蝕甘味料を検索している。

【実験方法】

実験にはS.mutans のGS5株(以下GS5)を用いている。
希少糖を培養液であるTY溶液に加え、それぞれ10%の希少糖の溶液を作製する。さらに各々を1%ショ糖非添加群、ショ糖添加群の2群に分ける。それぞれの溶液に対し、調整したGS5を加え、嫌気的条件下で培養を行う。一定の時間後に以下の実験を行う。
① 増殖能:濁度を計測
② 酸産生能:pHを測定
③ 不溶性グルカンの形成:フェノール硫酸法にて測定

【実験結果】

実験結果の一部を示す。

図は培養液にD-タガトースを添加したものである。
D-タガトースを添加(D-tag)すると、コントロール(cont)より濁度が低下した。
また、1%ショ糖にD-タガトースを添加((1%suc+D-tag)すると、試験管の底に沈殿物(グルカンと細菌の複合体)の量は、1%ショ糖添加(1%suc)と比較すると、低下した。
一方、酸の産生も、D-タガトースは抑制した。
D-プシコースやL-プシコース、L-タガトースでも同様の抑制効果が認められたが、明らかではなかった。
それぞれの結果を以下の表にまとめる。

増殖(濁度)酸産生(pH)不溶性グルカン
D-タガトース↓↓↓↓
L-タガトース
D-プシコース
L-プシコース
【まとめ・考察】

それぞれの希少糖が、GS5に対して何らかの作用を持つことが分かった。
特にD-タガトースがGS5に作用し、増殖、酸産生およびグルカン合成能に対して抑制的に働いていることが分かった。
今後、D-タガトースの低う蝕または抗う蝕甘味料としての有用性を検討し、さらに他の希少糖についても低う蝕甘味料としての可能性をさらに検索する予定である。