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研究内容(岩崎)

研究課題:PET診断に基づいた口腔癌治療戦略

担当: 岩崎昭憲

PET診断に基づく正確な腫瘍進展範囲、腫瘍悪性度、転移の有無、治療の奏効度(腫瘍残存の有無)、を判定し、臓器温存・機能温存を考慮した個々の患者に適した口腔癌治療の確立を目指す。

現在までの結果

「PETにより同時性重複癌が検出された口腔癌の臨床的検討」

口腔癌の重複癌は比較的多いことが知られているが、その治療には苦慮することもある。また近年、急速にFDG-PET診断を導入する施設が増え、PET撮像によって腫瘍の広がりや遠隔転移だけでなく重複癌と診断される症例が増えている。

FDG-PETを撮像した顎口腔領域癌患者85例中、PET撮像にて同時性多重癌が検出されたのは6例(7.0%)であった。5例が男性、1例が女性であった。口腔癌の原発部位として、舌癌5例、下歯肉癌1例であった。組織型としては全例が扁平上皮癌であった。重複癌の部位として、腎臓癌2例、S状結腸癌1例、食道癌1例、肺癌1例、腹腔内悪性リンパ腫1例であった。全例は重複癌の臨床症状は認めなかった。5例に対し検出から2カ月以内治療が開始でき、5例には根治的治療が施行され経過良好であった。しかし、1例は進展した重複癌によって不幸な転帰をとった。PETは口腔癌の同時性重複癌のスクリーニング検査として有用で、早期発見、早期治療により口腔癌の予後改善に貢献できる可能性がある。

症例:63歳、男性。治療前のPETにて舌癌に大腸癌の重複癌を検出した。舌癌に対して動注化学療法施行後、舌部分切除術、頸部郭清術施行した。当科治療後、継続して大腸癌の治療に移行し、腹腔鏡下にて大腸腫瘍切除術施行した。


これからの計画

① 「PET診断に基づいた治療効果判定」

近年、口腔癌の治療に動注化学放射線療法が導入されるようになり、その形態温存・機能温存の可能性が示されている。しかし、その治療の効果を臨床的・画像的に判定するには困難な場合もあり、腫瘍が完全消失(奏功度CR)していても切除を行う例や、反対に腫瘍が残存していても奏功度CRと判定し、救済手術への判断が後れることもある。われわれ口腔外科医はそのジレンマの中で現在治療を行っている。ところで近年のPET診断技術の向上により原発巣や頸部転移、遠隔転移といったステージ診断のみならず、治療効果判定診断の面が注目されている。化学療法や放射線治療では腫瘍部の形態学的変化よりも代謝的変化が先に生じるとされており、PET診断は代謝的変化を反映するため有利であると考えられる。

② フルオロミソニダゾールPETによる低酸素腫瘍評価」

腫瘍には活発な細胞増殖の課程で酸素の供給が不十分となる低酸素領域が存在し、低酸素領域は化学療法や放射線治療に感受性が低いことが知られているフルオロミソニダゾールは腫瘍の低酸素状態を把握できる標識化合物として注目され、フルオロミソニダゾールPETとして治療効果予測や治療計画への活用が期待されている。