地域病院関連施設のご案内
当医局は香川県内に複数の関連施設を持っており、それぞれの施設と連携しながら診療や研修を行っています。
島での診療や搬送を学べるのも当医局の特徴のひとつです。
小豆島にある小豆島中央病院の山本真由美先生にお話を伺いました。
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(スタッフと 2015.5 撮影)
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(病児保育室 2015.8撮影)
- 先生は卒後どれぐらいから小豆島の病院で勤務されていますか?
- 私は香川医科大学を卒業したあと、大学病院小児科病棟、NICU、愛媛県での新生児医療研修を経て卒後3年目で小豆島の内海病院(現、小豆島中央病院)に赴任しました。
その後卒後4年目で結婚し、子育てをしながら卒後6年目で小児科専門医を取得し、島での診療を続けています。
- 小豆島中央病院はどのぐらいの規模の病院ですか?また、院内でどのような取り組みをされていますか?
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小児科は6床ですが、島内で小児科の患者さんが入院できる唯一の施設なので、可能な限り受け入れています。当病院には産婦人科もあり、年間に170~180件のお産があります。基本的に母子同室での入院とし、赤ちゃんは小児科医がみています。また、病児保育や障害児の日中預かり、予防接種や乳児健診、保育園や幼稚園の園医、学校医といった地域の保健事業にも参加しています。
臨床の面では一般の外来診療に加えて、小児の虐待事例への対応、食物アレルギー負荷試験、発達遅滞や発達障害をもつ児の個別対応などを行っています。
- 小豆島中央病院小児科の勤務体制はどのようになっていますか?
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常勤の小児科医は3名です。そのほかに香川大学から週に3回先生方に来ていただき、外来診療をお願いしています。また、週に1回は研究日として大学に勉強に行かせてもらっています。夜間や休日は常勤医でオンコールを行っています。
- 島ならではの苦労などありますか?
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高度な医療が必要なケース、例えば呼吸管理が必要であるなどの場合には主に香川大学小児科やNICUに搬送しています。搬送の手段(フェリー、ヘリコプター、救命艇)の都合もあるので、当院での管理がいいのか、搬送が必要なのかの判断に困ることがあります。
また、小児科医が少ないので自分の得意分野にかかわらず全般的に診ることが必要ですがいろいろな症例が診られるので勉強になりますし、香川大学と連携して診療できるので安心です。
- 島での医療の魅力は何ですか?
- 赤ちゃんのころから継続して成長を見守っていくことができます。先日は、小学生のころ入退院を繰り返していた子が成人式のため帰省して着物姿を見せにきてくれました!
また、当院は他科の医師や他の職種のスタッフとの距離が近いので相談しやすいです。自分が「こうしたい!」と思うようにできることも多いです。同様に病院以外の保健師や園・学校などとも子どもを囲んで支え見守る一員同士として相談したり新しいことをはじめたりすることができます。
- 島での生活の魅力は何ですか?
- オンコール以外の休日はよほどでない限り呼ばれないので海や山など島の魅力を満喫できます。病院や地域にあるいろいろなスポーツの同好会で汗を流したり交流を楽しんだりする方もいます。子育てもしやすく子どもたちは外でのびのびと遊んで育っています・
- 島や地域での医療を目指す若い先生方に、メッセージをお願いします。
- 「島での医療」というと、あまりたくさんのことができない不自由で息苦しい医療環境というイメージがあるかもしれません。
実際は大学からのバックアップが得られることもあり安心して仕事ができますし、アイディアをだしながら地域に密着した診療を行うことができます。そのぶん人と人とのコミュニケーションが求められますが、自分の気の持ちようで十分楽しめる、充実した仕事ができる場です。若い先生方にも地域での医療をぜひ経験して、その楽しさを味わっていただきたいと思います。
新生児医療は四国こどもとおとなの医療センターでも学ぶ事ができます。西讃地区に位置しながら香川県のみならず、高知や徳島、愛媛からの搬送も受け入れています。
四国こどもとおとなの医療センター新生児内科に所属している新居先生にお話を伺いました。
- 先生は卒後どのような研修をされましたか?
どれぐらいから現在の病院で勤務されていますか?
- 私は学生の頃より新生児医療に興味があり、卒後は大学病院の小児科コースで初期研修を行い、入局後は6か月大学病院の小児科でNICU研修を経て、四国こどもとおとなの医療センターの新生児内科に配属されました。卒後5年目から1年半ほど香川大学小児科に戻り、一般小児の研修・小児科専門医取得を経て、再度当院に戻り新生児医療に従事させていただいています。執筆の時点で当院は1回目の配属を含めて4年が過ぎようとしています。
- 四国こどもとおとなの医療センターNICUはどのぐらいの規模ですか?また、院内でどのような取り組みをされていますか?
- 当院は総合周産期母子医療センターに指定されており、NICUは15床(隔離病床3床を含む)、後方病床となるGCUは18床を備えています。年間300人前後の入院患者を受け入れています。早産児、低出生体重児をはじめ、緊急手術・治療を要する先天性心疾患、小児外科疾患、脳外科疾患、内分泌・代謝疾患や皮膚疾患、遺伝性疾患などの治療を関係する専門家と協力して行っています。四国4県から新生児搬送を受け入れ、四国の症例に関しては可能な限り四国内で治療できるように日々努めています。また、多職種のコメディカルスタッフと連携して診療・臨床研究を行っています。そのほか診療以外でも、極低出生体重児や多胎児、各種医療的ケアを必要とする児、NICUで赤ちゃんを亡くされた御家族などに対する患者・家族会などのNICU退院児のサポート体制にも力を入れています。
- NICU勤務は長時間にわたるイメージがありますがいかがですか?
- 新生児医療の世界では「超早産児(超低出生体重児)が生まれたら、3日間は張り付きだー!家に帰らないぞー!」という声もよく聞かれます。お産も24時間対応です。総合周産期母子医療センターはNICU専属の当直医師が必要ですので、当直回数や呼び出し待機も多くなります。当施設でも長時間労働問題が提起され、「働き方改革」を実施しています。現在は主治医制から2チーム制での診療に切り替え、当直医は夕方出勤、翌日正午帰宅とし、平日は早く帰る・土日も当番がなければ可能な限り休みにしています。正直、今のような良い労働環境のNICUは日本全国でも見つけるのが難しいと思います。
- 新生児医療の魅力は何ですか?
- 沢山あって語りつくせないですが、強いて言うならば「インタクトサバイバル(後遺症なき生存)を目指し、児の幸せのために家族を支える」というところでしょうか。
インタクトサバイバルというのは、以前は「1歳半くらいになったとき、立って歩けて喋られるように発達する」という目標だったのですが、近年では「大きくなって社会人になって働いて納税してもらう」まで進んできて来ていると思います。ただ目の前の病気を治したり、抑えたりするだけではなく、この大きな目標のために、赤ちゃんをサポートする医療を行うということ。
またNICUは「赤ちゃんを新しい家族の一員として受け入れてもらう」という場でもあります。赤ちゃんは出生前後のトラブルのため、家族から分離され、家族は強い不安に曝されます。時に赤ちゃんは先天性あるいは後天性のハンディキャップを持つことがあります。そしてこれらが原因で赤ちゃんが家族に拒否されてしまうというリスクがあります。我々新生児医療に従事するスタッフは、「赤ちゃんが家族に愛されて幸せに生活するという本来当たり前の権利」を守るために家族のサポートをする必要があります。「目の前の赤ちゃんや家族のために何かできることはないだろうか」、そんな「熱さ」がこの医療の魅力でもあると思っています。
- 大学病院NICUとの違いはなんですか?
- 難しい質問ですね。うーん、後方病床のGCUのキャパシティーがいいので、受け入れ患者数が多い、小児心臓血管外科があるので先天性心疾患が集まる、四国4県の患者受け入れがあるので4県の交流がある、新生児専用ドクターカーがある、高松は遠いけど岡山が意外と近い、西の方のうどんが美味しい、空海に守られているので更に天気がいい。
- これから香川での研修・新生児医療を目指す若い先生方に、メッセージをお願いします。
- 私は臨床実習の時期まで小児科には全く興味がなかったのですが、香川大学で新生児医療に出会い、その魅力に取りつかれ、診療に従事しています。最近ではマンガ・ドラマの「コウノドリ」に一部取り上げられ、少しずつ認知されているように思いますが、多くの人にとって何やっているかわからない謎の組織だと思いますので、まずは興味を持って少しでも知っていただければ幸いです。「熱い」医療がここにはあります。
また、地域医療には人材が必要です。小児の急性期医療の現場は、こどもの命と人生を守るという重大な責務のため、多くの医師は身を粉にして働き、人生を捧げています。一方で、その大変さから体調を崩したり、女性・子育て家庭の働きずらさが生じることがあり、人材離れが起こっていることは全国的にも珍しいことではないように思います。前述の「3日寝ない」は武勇伝になりますが、多くの人が長く働き続ける障壁にもなり得ます。現在我々は「働き方改革」で、自身の体調やQOLを守りつつ、互いに助け合い、人材を守ることに力を入れています。この目標には人材の数が力になります。私たちと一緒に働きましょう。
