OB・海外からの声

香川大学医学部附属病院病理診断科・病理部に以前在籍されており、県外に移られたOBの方々や海外留学している先生からの活動的な内容をお届けします。


※ 平成13年から平成17年まで香川大学医学部附属病院病理部 助教、その後済生会今治病院勤務後、現在沖縄赤十字病院で勤務されている石川雅士先生からのエッセイをお届けします!

沖縄ライフ

沖縄赤十字病院 検査部部長 石川雅士

まだ一月末だというのに、病院向かいの公園の桜は早くも二分咲き。あと半月もすれば、初夏の気配が漂ってくる。

そういえば先日、公園を通り抜けて家に帰るとき、何年も春を楽しんでいなかったことを思い出した。内地の春は嫌なスギ花粉とともにやって来る。あの苦しい日々・・・。来る日も、来る日も、ダースベーダーのような重装備で通勤していたあの日々。もう戻れないなと思い、一人苦笑した。

話は変わるが、三月末でまる三年になる沖縄ライフ。今となっては笑い事で済むのだが、当初不安がなかったわけではない。その不安というのが食べ物と交通。観光で沖縄に来ていたころはミミガー、らふてぇー、グルクンの唐揚げ、海ぶどう、沖縄そばにしめのステーキと、何を食べても幸せだったが、いざ住むとなると毎日沖縄料理というわけにはいかない。学会に行くのも大変?前任者がなかなか後任を探し出せなかったのは、その辺も絡んでいるのかなと思ったこともある。皆さんはどうだろうか?実際には全く問題はない。時々近所のスーパーへ行くが、こちらで多くとれるマグロや有名なグルクン、ブダイだけでなく、アジやサバ、カツオやサンマ、イカやタコ、サケやホッケ、鍋用の鱈まで、九州あたりのものを中心に全国のものを売っている。野菜は沖縄固有の島野菜だけでなく、ほぼすべてのものを買うことができる。納豆や加ト吉の冷凍うどんも普通に売られているし、愛媛産のミカンや小豆島のキウイも先日見かけた。黒田屋や五右衛門、さか枝、竹清はないけど、はなまるはあるし、バチモノ讃岐うどんの丸亀製麺も最近店舗が増殖中。居酒屋も、観光客がよくいく国際通りあたりの店は沖縄料理や沖縄ローカルな食材が中心だけど、地元の人が行く居酒屋は内地と変わりない。長寿県復活を目指して“イチキロヘラス”運動を展開している沖縄県の食の問題は、低料金なのに料理の量が多いことと、日本酒を置いている店が少ないことくらいだろう。

交通も来てみてびっくり。東京や大阪へは便数も多いし、競合路線があるために、かなり低料金。おまけに、最近はLCCも就航で、料金は低下の一途。他の地域に行くのも、沖縄からだと多くの県に飛行機が飛んでいるのでかなり楽ができる。それから、中国や韓国だけでなく、東南アジアの国々への旅行も直行便や台北経由で楽ちん・快適。唯一の問題は、日々の交通渋滞だが、我々の仕事は始業時間が9時なので、渋滞とは無関係。

そんなこんなで、不安の消えた沖縄ライフ。日々の仕事はどこでも同じ。ということで、もうすぐ四年目に突入する沖縄ライフ、誰かに引き継ぐまで、島唄の緩やかなリズムにのって過ごしていこうと思う今日この頃です。

ハタの刺身
緋寒桜

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※ 平成24年まで香川大学医学部附属病院病理部 助教として勤務され、現在アメリカ ニューヨーク州ニューヨーク市にあるMemorial Slone-Kettering Cancer Center (MSKCC)胸部病理部門に留学されている門田球一先生からの留学報告をお届けします!

アメリカからの留学報告

香川大学医学部附属病院病理診断科・病理部 門田 球一

私は香川大学医学部を2003年に卒業、香川大学医学部付属病院病理部に入局し、病理医として研修を行いました。2009年には病理専門医と細胞診断専門医資格を取得、香川大学大学院を修了し、米国ニューヨーク州ニューヨーク市にあるMemorial Slone-Kettering Cancer Center (MSKCC)の胸部病理部門への留学の機会を頂き、現在までMSKCCで胸部腫瘍の臨床病理学的研究および病理診断研修に従事しています。ニューヨーク市は言わずと知れた国際的巨大都市で、世界の政治、経済および学問の中心であり、MSKCC以外にも多くの有名な大学や研究所が立地しています。MSKCCはアッパーイーストと呼ばれる高級住宅街に位置し、タイムズスクエアーなどの観光地と比べると静かで、ロックフェラー研究所やコーネル大学医学部などが近接し、アカデミックな雰囲気の地区にあります。私は家族とともにマンハッタンの東側、イーストリバーのルーズベルト島にあるアパートメントに住み、職場まではトラム(スキー場のゴンドラのような乗り物)あるいは地下鉄でイーストリバーを渡り、30分以内ほどで通勤することができます。私の子供たちが通う小学校にはアメリカ人のみならず様々な国籍の子供たちが在籍しており、ニューヨークがまさに人種のるつぼあることが実感させられます。私の留学先のボスはMSKCC 病理部門のDr. Travisという病理医です。Dr. Travisは胸部病理学の世界的権威で、胸部腫瘍の国際的分類(WHO分類)の筆頭著者として知られていますが、とてもお優しく紳士的な方であるとともに、とても親日家で学会講演などを含め頻繁に日本を訪れています。研究室では、肺癌や胸膜悪性中皮腫の病理学的予後因子を解析し、遺伝子発現や遺伝子異常との関連性などを検討しています。同時にMSKCC胸部外科研究室と共同で、多くの胸部外科医やそのフェローたちとともに胸部腫瘍における腫瘍免疫や免疫療法の研究をしています。これらの研究結果は国際学会(米国カナダ病理学会や国際肺癌学会)で口頭発表するとともに、英文医学雑誌(Modern Pathology, American Journal of Surgical Pathology, Cancer など)に掲載することができました。世界最高峰の癌センターと称されるMSKCCでの研究生活は想像以上に厳しいもので、当初は英会話にも大変苦労しましたが、家族や同僚の支えに助けられ、気がつけばニューヨークでの生活は5年目を迎えました。再び日本で病理医として働く際の糧となるように、残りの留学生活も精一杯がんばりたいと思っています。

ニューヨークの風景
Dr. Travisとの写真

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※ 平成20年に病理診断科・病理部に入局された林俊哲先生がカナダのトロント大学病理部に留学されていました。その当時の様子を詳細にお届けします!

カナダからの留学報告

香川大学医学部附属病院病理診断科・病理部 林 俊哲

平成20年より香川大学医学部附属病院病理診断科・病理部に入局致しました林俊哲と申します。入局から約4年が経過しましたが、その間に病理専門医と細胞診専門医の資格を取得し、平成24年8月よりカナダのトロント大学/University Health Network(UHN)に臨床留学をしています。以下、留学中の研究活動と生活環境について記載しますが、この内容がこれから入局を希望される先生方や、臨床留学を希望される方に、何かご参考になれば幸いです。

私は現在、カナダのオンタリオ州(Province of Ontario)のトロント(City of Toronto)に所在するトロント大学/UHNの病理部神経内分泌診断部門に留学しております。カナダ最大の都市であるトロントは、都市圏に約600万人の人口を抱え、北米ではNew York、Los Angels、Chicagoに次ぐ4番目の大都市となっています。また、トロントは数多くの民者を受け入れ、様々な人種・国籍の人々が共存する国際都市でもあります。トロント市は高層ビルが建ち並ぶ北米経済の中心地でありますが、観光名所としても世界的に有名で、街中には美しくイギリス風の建造物も散見されます。

トロント大学はカナダ屈指の名門大学で、世界的にも評価が非常に高い大学です。私が所属している香川大学医学部附属病院病理診断科・病理部の業務の中心は病理診断であり、私自身も将来にわたって病理診断、特に神経内分泌病理を専門分野として専攻していきたいと思っておりますので、下垂体病理研究の世界的権威であるトロント大学病理部門の Sylvia Asa教授の下で研究活動を行っております。彼女は故・佐野壽昭教授(元徳島大学大学院人体病理学)の友人であり、親友の紹介を通じて、トロント大学への受入を認可してもらいました。神経内分泌病理という専門分野は日本やカナダでは極めてマイナーな分野で、世界中でも神経内分泌病理を専任している病理医は恐らく100人もいないと言われています。しかし、神経内分泌腫瘍は人体のほぼ全臓器に発生し、転移巣となることもあります。また遺伝性腫瘍症候群との関連性の精査が必要で、治療方針と予後は他の腫瘍とは大きく異なるため、正確な病理診断を行うには、病理医には専門的な高度なトレーニングと病理総論知識、そしてそれらを常にアップデートしていくことが必要とされるため、非常に挑戦的で有望な分野です。この分野の難しさと面白さを理解して頂くため、以下ではトロント大学/UHNの留学状況および神経内分泌病理の学習について報告致したいと思います。

まず、トロント大学/UHN病理診断部門に着任した当時、UHN病理診断部門の予想以上の規模に驚きました。専任職員の数は425人、常勤病理専門医のスタッフは60人、フェロー、レジデントおよび諸国から留学する病理医は常時70人以上に達し、世界的にも屈指のスタッフ数です。しかも病理医を補助するparamedic(事務の方、補佐員、pathology assistant/PA、細胞検査士)のスタッフ数が日本と比較にならないほど充実していて、その人数は日本の10倍以上であるのではないか推測され、その充実ぶりは大変印象的でした。トロント大学/UHN病理診断部門ではparamedicの人数を増やすことによって、病理医の作業負担の軽減を図るとともに、病理医が専門的な医療活動と研究活動に集中できる環境を整備することで、仕事と家庭を両立できるよう十分に工夫していることが窺われます。また、レジデント、フェローあるいはスタッフの半数以上は、世界中からトロント大学に集まってくる優れた病理医・研究者であり、特に外国医学校出身のレジデントは、ほぼ全員が母国で専門分野を持っている病理医か、あるいはカナダで医師資格を取得したうえで、改めて病理研修を受けているのです。彼ら(彼女ら)と一緒にroundや検鏡する際、彼ら(彼女ら)のレベルの高さに驚きました。優秀な研究者もかなり多いですし、何よりも出身、人種あるいは母国語に拘わらず、流暢な英語を操って懸命に勉学する姿を見ると、自分自身にも大きな刺激になりました。他方、カナダ国内では病院が少ないため、病理専門医の資格を取得したとしても、海外医学校出身やアメリカ医学校出身の候補者と、数少ないpositionを競争しなければなりません。そのため、彼ら(彼女ら)は激しい競争と将来就職の不安などといったストレスの中を生きているような印象を受けます。一方、フェロー以上のスタッフは、自分専用の綺麗で広々とした個室を持っていて、各専門医が自分の専門分野の病理診断を一週間ずつ担当しています。診断業務がない期間は、研究をしたり、医学生、レジデントやフェローの指導を行ったりしています。業務の分業が進展し、スタッフの人数も充実しているため、paramedicは夕方の5時頃、医師全員は夜7時頃には仕事を終えることがほとんどのようです。トロント大学の医療従事者は、仕事も家庭も、そして自分の人生も楽しめる快適な職場環境が揃っているという印象を受けました。

私が配属された神経内分泌病理診断部門構成は、medical director兼主任教授(AFIPの下垂体腫瘍atlas編集長のProf. Dr. Asa)と2人のassistant professor (Dr. MeteとDr. Winer)からなります。診断業務の内容は院内や関連病院の標本に限らず、カナダ国内や世界中からconsultも受け取っています。そのうち約8割が甲状腺腫瘍、残りが消化器/膵臓/肺神経内分泌腫瘍、下垂体腫瘍、副甲状腺腫瘍、副腎腫瘍などとなっています。平均一日の手術材料は約8~13症例で豊富な神経内分泌腫瘍の症例が集まっています。神経内分泌病理はマイナーな分野で、選択コースとして選ぶレジデントや実習希望者の学生が少ないため、留学期間にはほぼすべての症例を経験し、世界トップレベルである権威の専門家による個別指導と相談を長時間受けることができています。世界から集まる貴重な症例のみならず、診断基準、アプローチ方法、米国臨床病理医協会(CAP)の取り扱い基準に沿って病理標本報告(synoptic report)の作成、臨床医や他の職種との取り扱い方法、医学専門英語の正しい発音などの幅広い知識を吸収することができました。更に他の専門分野やレジデント向きのround、他の大学教授の招待講演に積極的に参加しています。カナダに留学するまではWHO分類や教科書、癌取扱い規約を準じて診断を行ってきましたが、その基準自体に対して多くの疑問を持ちませんでした。しかしながら、assistant professorのDr. Meteから現有の文献を批判的に吟味し、自ら頭の中で整理し検鏡所見と比較しながら新しい論点や診断基準を挑戦的にadviceされるのは独創的で非常に衝撃的でした。しかしながら病理診断について、日本の方が優れている点もよくあります。技師による丁寧な病理標本作成の技術、paramedicの迅速対応、責任感や細やかな気遣いといった日本の良さは、海外にいることで再認識することができました。日本の多くの病理医は全臓器を診ていて、自ら病理標本の肉眼所見を確認した上で切り出しを行っているため、そのような作業は正確な診断に大変役に立っていると思います。カナダでは医療訴訟が度重なり、大学では医療裁判を目的とした病理解剖、consultおよび医療訴訟事情と紛争を未然に防ぐため予防的な検査が多いため、総医療費の高騰による社会負担、医療従事者のストレスおよび病理の最終報告までの期間(turn-around time)の遅延につながることになります。また、留学にあたって周りのスタッフは外国人の私に対して、最初からほとんど配慮や手配をしてくれず、すべて自分でこなさなければなりませんでした。幸いに留学の前から色々な情報を収集したことや、台湾で病理レジデントを担当した際に受けた英語教育で培った習慣(CAP様式に基づいたアメリカ式病理トレーニングと診断業務で英文診断書の作成および英文文献の使用)が、留学中にも大変役立っています。

生活面において、留学生活と研究業務に集中するため単身赴任しています。宿泊先のシェアハウスで知り合ったイギリス人夫婦や、色々なバックグラウンドを持つ日本からの留学生達と仲良くなり、仕事の後や休日の際には一緒に英会話しながら楽しく食事をしたり、市内でのexcursion、悩み相談や生活の助言を頂いたりして、非常に心強く思います。同時に、旧徳島大学助教授の廣川満良先生からの勧告に従い、なるべく日本で経験・学習できないこと体験すべく、英語学習に専念することはもとより、体力維持を兼ねて仲間達と英語のyoga classに挑戦することも継続するなど、毎日英語漬け(English only)の生活を送っています。カナダ先人の開拓精神の如く、なるべく他人に頼らず努力すること、自己主張の方法や他人とのコミュニケーションの仕方を改めて学んでいます。このカナダ留学を通じて磨かれた経験と人脈は私の一生の財産ですので、香川大学医学部病理診断科・病理部および関連病院の為に活かすことができれば幸いです。

末筆ながら、これまで留学の間、科長・部長の羽場礼次先生をはじめ、支えて下さった多くの同門の諸先生方、技師の方、事務の方、カナダで知り合った同僚・友達、最愛の妻と家族に深く感謝いたします。

Niagaraの滝
Intercontinental HotelにてToronto大学/UHN病理部の忘年会(職員のみで400人も集まりました)。
右から二人目はDr. Winer; 写真中央にDr. Mete
Prof. Dr. Sylvia Asaとの記念撮影
親友との定期トロント市内懇親excursionのスナップ写真
留学前壮行会の風景【私の膝に座っているのは愛娘亜紗(あさ)】

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※ 平成19年から平成22年まで香川大学医学部附属病院病理部 医員として勤務され、現在済生会今治病院に勤務されている坂東先生からの近況報告をお届けします!

医局員だより

済生会今治病院 坂東 健次

私は、香川大学の学生・研修医・病理部医員として約11年間香川県で過ごした後、2010年7月からは愛媛県の済生会今治病院に勤務しています。最初の9ヶ月間は常勤病理医が二人でしたが、石川雅士先生の退職(沖縄赤十字病院へ転勤)後は一人です。

一人で診断していると、難解な症例に遭遇しても相談相手がいないため、時に不安や心細さを感じます。しかし、当院では平日でも週1回香川大学へ行く許可が出ており、また月1回は香川から羽場先生が来てくださるので、いつでも誰かに相談できる体制が整っています。

趣味は将棋や音楽鑑賞(昭和の歌謡曲が好きです)などですが、今治に来てからはゴルフも始めました。練習は週1~2回、ラウンドは月1回ほどのペースです。初心者の目標であるスコア100切りは、約3年かかりましたが2013年の8月3日(今治ゆるキャラ、バリィさんの誕生日)に達成し、お祝いとして医局ゴルフ部の皆さまからパター練習用マットを頂きました。病理診断室に敷いて時々練習しています(写真)。

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