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虚血肢の救済

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下肢の病変に対する外科的治療

心臓や脳に比べ医療の話題になることは少ないものの、下肢は人間の生活に重要な役割をはたしています。下肢に障害が出れば移動が制限されるので生活の質は大きく低下し、障害が進行すると命にまで係わる場合すらあります。 現在、足部に痛みや潰瘍・知覚の低下といった問題を有する患者さんの頻度は少しずつ増えています。食生活の洋風化に伴う糖尿病の増加がその大きな原因となっています。こうした背景の中で、医学界における下肢の病変―特に糖尿病性の血管病変に起因する下肢の病変―の治療についての関心は最近とみに高まっています。 香川大学形成外科においては、血流障害に起因する下肢の病変の治療に積極的に取り組んでおり、世界的にもパイオニア的な立場として情報を発信しております (四国新聞の田中先生の記事

糖尿病で下肢に病変が生じる理由

図1:香川大学附属病院放射線科技師/勢川博雄氏提供

下肢に対する血行は主として3本の血管によって供給されています。足関節からはこれらの血管が互いに交通して血管網を形成しています(図1)。

糖尿病が生じると代謝性変化により血管が障害されて、内腔の狭窄化や石灰化が生じます(図2)。この現象を血管内腔の狭小化と呼びますが、狭小化が進行すると、血流はそこで途絶します。

図2:血管病変の異常

図3:血管造影の所見および下肢の所見

血流評価には、血管造影(血管内に造影剤を入れて映し出す)やCT-血管撮影を行います。この検査によって、血管病変を映し出すことができます。
例えば図3においては足に血流を供給する下腿血管が、糖尿病に起因する高度な石灰化によって閉塞して下肢への血行が十分にまかなわれていない状態です(図3左)。このために足趾に虚血を生じ、図3右のように先端が壊死しました。

外科的血行再建術

図4:バイパスのイメージ

こうした状態を改善するためには、途絶した血行を再建する必要があります。そのために途絶した部分を迂回して、末梢に血液を流すためのバイパスを作ります(図4)。

実際の手術においては身体の他の部位(下肢の内側や背中)から血管を採取し、これを中枢側と末梢側の血管の間に吻合する操作が行われます(図5)。

このように、移植血管を用いたバイパスを作成することによって、下肢の末梢部分の血流を改善することができます(図6)。

図5:血管の採取

図6:手術施行後の血管造影写真

このように当科おいては、血行不全陥った下肢を手術る改善とこのように当科おいては、血行不全陥った下肢を手術る改善と救済する治療に取り組んでいます。 現在に至るまで、多くの血流不全陥った下肢を救済してきました。

図7:四肢先端の壊死に対して組織移植を行った症例

図8:進行性の壊死を血行再建により食い止めた症例

図9:虚血に陥っている拇趾を血行再建により救済した症例

当科における治療の特徴

外科的血行再建術は以前より行われていましたが、簡単な拡大鏡を眼鏡の代わりにかけることにより行う手術でした。このためにせっかく血管を吻合してもうまく開通しない場合がしばしばあり、手術成績が必ずしも安定していませんでした。この問題を解決するために、われわれは手術用の顕微鏡を用いて行う、顕微鏡下外科的遠位血行再建術を行っています(図10)。

図10:血管吻合を行っている所見

図11:下肢生存率

精密作業で行う手術の結果、従来は手術の適応とはみなされていなかった症例に対しても手術を行うことが可能となり、患者さんの満足度を上げております。治療の成績も良好であり、海外において行われた大規模臨床研究(PREVENT Ⅲ clinical study)の水準を上回る成果を上げています(図11)。

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