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副腎腫瘍

はじめに

副腎とは、左右の腎臓の上にある小さな臓器です。
これは様々なホルモンを作っており、非常に重要な臓器の一つです。近年、副腎腫瘍はCTなどの画像診断の発達や内科等の他科の先生方のご協力によって数多く発見されるようになってきています。

当科でも2005年に科名を泌尿器科から泌尿器・副腎・腎移植外科に変更して、手術症例数が増加しています。
われわれの施設では腫瘍がホルモンを過剰分泌している「原発性アルドステロン症」、「クッシング症候群」、「褐色細胞腫」に対して、またホルモン産生のない「非機能性腫瘍」であってもサイズが4cmを超える場合は手術をおこなっています。

腫瘍の大きさや悪性の有無、その他の条件にもよりますが、副腎の手術は基本的に腹腔鏡で施行しています。
腹腔鏡手術では5-10mmの穴を3-4個あけるだけで副腎の摘出が可能ですので、術後の回復もおなかを大きく切る場合に比べてはるかに良好で、痛みもかなり少なくてすみます。
また、美容的にもおおきなメリットがあります。

原発性アルドステロン症(Primary aldosteronism, PA)

わが国の高血圧症の患者は約4,000万人存在するといわれています。
この高血圧症の原因の一つとしてPAがあります。
これは副腎からアルドステロンというホルモンが過剰に産生されることによって高血圧症などの様々な病態を引き起こしているものです。
近年、PAの患者は今まで考えられていたより遙かに多く存在することがわかってきました。
報告にもよりますが、高血圧症患者の約5-20%がこのPAによるものだとされています。
つまり日本全国で約400万人ものPA患者が存在しているものと推測されます。

もし、高血圧症の原因がPAであると診断できれば、手術によってよくなる可能性があるということです。
副腎の摘出によって術後は降圧剤をやめたり減量したりすることができます。
診断は、血液検査やCT、最終的にはカテーテル検査で副腎静脈から直接採血してホルモン濃度を測定します。

最近では一般医家の先生のみならず、患者さんにも徐々にPAが認知されつつあり、それにつれて発見される患者も増えてきました。
しかし、まだまだ十分に発見されているとは言い難い状況です。
高血圧症の人、特に若年者やコントロールが不良の場合には一度主治医にご相談してみてください。

クッシング症候群

副腎からコルチゾールというホルモンが過剰に分泌され、全身にさまざまな症状が生じる病気です。
コルチゾールはからだにストレスがかかった時に血糖や血圧を上昇させる役割がありますが、過剰分泌が続くと糖尿病や高血圧の原因になります。
クッシング症候群には脳下垂体から副腎刺激ホルモン過剰分泌が原因のクッシング病と、副腎腫瘍からコルチゾールが過剰に分泌される副腎性クッシング症候群があります。

CT、血液検査、尿検査、ステロイド負荷試験などで診断を行います。
クッシング症候群の原因が副腎腫瘍であった場合は外科的手術の適応です。
手術の前後はホルモンのバランスが不安定になることもあるため、内分泌内科と連携して治療を行っていきます。

褐色細胞腫

副腎腫瘍からカテコラミンという心臓や血管の収縮に関わるホルモンが過剰に分泌されることで起こる病気です。
カテコラミン過剰分泌の結果、急激な血圧変動が起こり、頭痛・動悸、嘔気、発汗などの症状がみられます。
褐色細胞腫は遺伝性腫瘍に合併することがあり、多発性内分泌腫瘍Ⅱ型、Von Hippel Lindau病、神経線維腫症Ⅰ型などが知られています。

術中術後は慎重な血圧管理が必要となるため、内分泌内科、麻酔科と連携しながら状態が安定するまでは集中治療室で全身管理を行います。
褐色細胞腫には悪性のものがあるため、術後も定期的な画像検査で再発がないか確認していきます。