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膀胱がん

はじめに

尿は腎臓で作られ、腎盂(じんう:腎臓で尿を集めるところ)、そして尿管という細い管を通り膀胱に至ります。そこで貯まった尿は、膀胱が収縮することで、尿道を通り体外に出されます。この尿の通路(腎盂・尿管・膀胱・尿道)を総称して「尿路」といいます(図1)。

尿路の内腔(うちがわ)は尿路上皮という粘膜で覆われており、ここで発生したがんを「尿路上皮がん」と呼び、できる場所によって「腎盂がん・尿管がん・膀胱がん」という名前がつきます。ここでは膀胱がんを中心に解説します。

図1

尿潜血陽性を指摘されたことはありませんか?

膀胱がんは尿潜血陽性(1+以上)を契機に発見されることが多く、「尿の回数が多い・排尿時の痛み」など膀胱炎のような症状で診断される場合もあります。

膀胱がんは「高齢・男性・喫煙者」に多いとされ、その他にも「化学物質を扱う職業」を経験された方に好発することも有ります。気になった方は泌尿器科医にご相談ください。

2020年の市民公開講座で田岡利宜也先生が「放っておけない尿潜血陽性!~腎盂・尿管・膀胱がんの診断から治療まで~」というテーマで講演いたしました。是非ご覧ください。

検査と診断

膀胱がんは、主に「①尿検査・②内視鏡検査・③画像検査」で診断されます(画像1)。

①尿検査

尿のなかにがん細胞が出ていないかを調べます。

②内視鏡検査(膀胱鏡検査)

膀胱の中を内視鏡で観察します。当院では柔らかく細い内視鏡(軟性膀胱鏡)を使用していますので、痛みは比較的少なく安全に実施できています。

③画像検査

超音波検査のほか、①や②の検査で膀胱がんが見つかった場合、その広がりを評価するために、CT検査やMRI検査などを追加させていただく場合があります。

画像1

膀胱がんの3つの病期(進行の程度)

膀胱がんは、初期には膀胱の壁の浅い層でとどまっていますが、進行すると筋層(尿を出すための筋肉の層)へ浸潤し、そして膀胱の外へと広がります。

膀胱がんの病期は、筋層まで病変が及んでいるかどうか膀胱の外まで病変が及んでいるかどうかによって、「筋層非浸潤性膀胱がん・筋層浸潤性膀胱がん・転移性膀胱がん」の3つに分けられます。(図2)

図2

膀胱がんの治療

筋層非浸潤性膀胱がんの治療

尿道から細い内視鏡を入れて腫瘍を切除する手術:経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)を受けて頂きます。手術翌日には食事・歩行ができ、2~3日目には退院が可能です。(図4)

図3

TUR-BTを受けたあと、患者さまの約50%が再発し、15-30%が筋層に浸潤することが知られています。

当院では、手術の質を向上させる試み(図4-1)、光線力学診断、そして再発リスクの高い方への2回目のTUR-BT(図4-2)、および膀胱内にBCG(ビーシージー)等を注入する治療を組み合わせることで、再発する割合は少なくなっています。

図4

筋層浸潤性膀胱がんの治療

膀胱、および所属リンパ節の摘除を基本とし、男性では前立腺・精嚢、場合によっては尿道を同時に、女性では尿道、場合によっては子宮・卵巣・膣を同時に摘除する手術:根治的膀胱全摘除術が推奨されます。

当院ではより低侵襲な手術を目指して、2014年から手術支援ロボット(da Vinci)による手術を積極的に行っており、豊富な手術経験を有しています。

尚、手術の治癒効果を高めるために、抗がん剤治療を手術の前後で提案させていただく場合があります。

転移性膀胱がんの治療

膀胱がんは転移すると命にかかわる状態となります。個々の患者さんのご希望、全身状態、病状を勘案し、治療法を検討します。多くは抗がん剤による治療と最新の免疫療法が選ばれます。

そのほか当院では多くの臨床試験を受け入れており、未承認の薬剤を使用できる可能性があります。随時お問い合わせください。

さいごに

当院では、膀胱がんの治療成績を向上させるべく、先進的な検査や治療を積極的に取り入れており、「最後まで諦めない、世界標準の泌尿器科癌診療」を皆様にご提供いたします。