─── 中四国・九州地区初の先進医療 ───
高密度焦点式超音波療法(HIFU)を用いた前立腺癌局所療法(Focal therapy)の導入
当院では、本年6月より高密度焦点式超音波療法(high-intensity focused ultrasound、HIFU)を用いた前立腺癌局所療法(Focal therapy)を導入致します。
本治療法は、先進医療であり、中四国・九州地区で初の導入施設(全国で4番目)となります。

導入の背景
前立腺癌の約90%を占める限局性前立腺癌の治療は、低リスク群の一部に対する監視療法(Active surveillance)と、根治的治療(外科的切除及び放射線治療による全体照射)が一般的ですが、根治的治療では前立腺全体を治療するため排尿機能や性機能障害の発生が問題となります。
一方、MRI画像や生検技術の進歩により臨床的に治療意義のある癌の前立腺内での局在診断ができるようになり、その局在診断された癌の部位のみ治療を行う局所療法(Focal therapy)の有用性が報告されています。
前立腺癌に対するFocal therapyは、「患者の予後に影響する癌を治療する一方、可能な限り正常組織を温存することにより、排尿および性機能を可能な限り温存する治療法」と定義されており、いくつかの治療モダリティの中でも高密度焦点式超音波療法(HIFU)を用いる治療が低コスト、低侵襲であり、2023年2月より先進医療として認可されました。
治療の概要
適応は、前述のBioJet®システムを用いたMRI-超音波融合画像ガイド下前立腺生検により癌の局在診断が行われた、低・中リスクの限局性前立腺癌になります。
治療は、全身麻酔もしくは脊椎麻酔下に行います。
前立腺生検の時と同様に経直腸的にHIFUの治療用プローベを挿入し、超音波画像で前立腺内の癌の標的部位を確認し、集束超音波を用いて焼灼・凝固します。
この治療法は、針を刺すこともないため他の局所療法(凍結療法やラジオ波)に比べ低侵襲です。
術後は尿道カテーテルを留置しますが、翌朝には抜去し、排尿を確認後に退院となります。
現時点では入院による治療が必要ですが、将来的には外来での治療に移行していくと思われます。
治療後は、監視療法と同様に経過観察を行うこととなりますが、再発時には放射線治療ではないため再度本治療を行うことが可能であり、前立腺全摘術や放射線治療などの前立腺全体の治療(根治治療)に移行することも可能です。
先進医療
本治療法は2023年2月より先進医療B「集束超音波治療器を用いた前立腺がん局所焼灼・凝固 療法」として承認されており、今後の保険収載を目指し多施設共同研究として実施されます。
また、先進医療であるため民間の先進医療保険に加入されている患者様は医療技術費(約65万円)を保険でカバーすることができ、その他の医療費についても公的医療保険が適応されます。
ご紹介のお願い
本治療法の適応が、前述したMRI-超音波融合画像ガイド下前立腺生検により癌の局在診断が必要なため、本治療法を希望されるPSA高値の患者様がいらっしゃいましたら生検前にご紹介いただければ幸いです。
なお、生検後に治療を希望された場合には、生検前のMRI画像があれば当院でMRI-超音波融合画像ガイド下に再生検を行い局在診断ができれば実施可能です。